感動という意味では、勝利以上。もしキミ・ライコネンが一緒に表彰台に上がっていればフェラーリにとって、ほとんど完璧なイタリアGPだった──。
予選Q3の最後、ライコネンがベッテルのタイムを破ってフロントロウを手に入れた瞬間にモンツァを包んだ歓声は、日曜の午後、大きなため息に変わった。動かないフェラーリの左右を全車がすり抜けていく。アンチストールモードに入ってしまった原因は不明。ライコネンは「自分が知っているかぎり、すべて正確に正しく操作した」と言う。
1周目の順位は14番手。そこから5位まで挽回したレースはライコネンの巧さが際立つものであったけれど……キミが活躍すれば誰もがうれしいだけに、スタートの躓きが残念でならない。がっかりしたのは、ティフォシだけではない。
平均時速235km、高速モンツァの全開率は70%を超える。地元グランプリに懸けてフェラーリが投入したバージョンアップ版のパワーユニットはシーズン4基目──開発トークンは手元に残していても、今後、性能を向上した新規パワーユニットを投入する際には5基目のペナルティを背負わなくてはならない。
メルセデスの場合、残りの7トークンをすべて使った今回のパワーユニットはシーズン3基目で、計画どおり。ところが、モンツァ用には2基しかない新パワーユニットの1基、ロズベルグのマシンに搭載されていたものに冷却漏れのトラブルが発生してしまった。予選直前、ニコのマシンに搭載されたのはベルギーGPまで5戦を走行したもの。予選は若干のパワー不足でハンデを抱えて4位に終わったが、「耐久性に問題はない」というメルセデスの判断は、予選で周回数を抑えていない様子からも想像できた。
53周レースの51周目にブローアップというシナリオは計算外。同時に、残りわずか3周で力尽きた事実は、物理の法則の非情さと、メルセデスの耐久設計の正確さを示している。けっして“オーバーリライアビリティ”ではないのだ。