33周目を走り切ったところで、ロズベルグはタイヤを交換するためにピットに入ります。その時の彼は、ピットロードを非常に速く走り、速度制限区間に入る際にタイヤをロックさせるほど攻めます。そしてコースに戻った次の周、ロズベルグは1分11秒235を記録します。これは、このレースのファステストラップ。つまりロズベルグは、ピットストップのタイミングでハミルトンに逆転させじと、自分ができる限り最大限の仕事をしてトップをキープしたと言うことができます。逆にハミルトンは、ピットアウト時にミスを犯します。ピットレーン出口のホワイトラインをカットしてしまい、5秒のタイムペナルティを課せられてしまうのです。
今季ここまで、無線でライバルの動向を気にするなど、どうも集中力に欠けるようなシーンが目立ったロズベルグ。終盤、フラットスポットを作ってしまったのか、フロントタイヤのバイブレーションを心配する無線はありましたが、今回のレースではそれ以外は常に集中していた印象です。完璧なレースだったと言えるでしょう。こういうドライビングをされてしまえば、いくらハミルトンと言えども、攻め入ることはできませんでした。
強く、速いロズベルグが戻ってきたように感じさせた、今回のオーストリアGP。今年の中盤も、昨年と同じくロズベルグとハミルトンによる、熾烈なチャンピオン争いになっていきそうです。今後のレースが、実に楽しみになって参りました。
さて、メルセデスAMGを追う立場のはずのフェラーリは、今回ミスやトラブルが目立ちました。金曜日にはセバスチャン・ベッテルにギヤボックスのトラブルが発生し、予選ではキミ・ライコネンへのコースインの指示が遅れてなんとQ1敗退。決勝では1周目にライコネンがマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソと大クラッシュしてリタイアし、ベッテルはピットインの際にナットのトラブルが生じて表彰台を逃してしまう……散々なレースになってしまいました。
ベッテルもライコネンも、フリー走行から非常に良いペースで走行していました。特にベッテルは、前述のナットのトラブルがなければ、少なくともウイリアムズのフェリペ・マッサの10秒前でフィニッシュし、表彰台は確実だったはずです。そういう意味では、非常に勿体ないトラブル(ミス?)だったと言えると思います。ライコネンは、クラッシュの際のマシンの挙動が気になるところ。彼は、前戦カナダでもピットアウト直後に不可解なスピンを喫しています。今回のクラッシュ前の動きも非常に不思議なモノで、この2件の因果関係が心配されます。
カナダに続き、またもマシンのパフォーマンスを決勝結果に繋げることができなかったフェラーリ。数字の上では、マシンのポテンシャルは確実にメルセデスAMGに近づいてきているだけに、ミスやトラブルの発生を減らすことが急務となるでしょう。