もうひとつ、契約がなかなかまとまらない理由がある。それはハミルトンが今年からマネージャーを雇わずに自ら交渉していることだ。原則マネージャーがグランプリ期間中に契約の交渉を行ったとしても、その内容はドライバーには伝えない。ドライバーはレースに集中したいからだ。つまり、マネージャーがいないハミルトンとの交渉をメルセデス側(エグゼクティブディレクターのトト・ウォルフが担当)はグランプリ期間中に行っていないものと考えられる。フライアウェイだった開幕からの4戦は移動時間も長く、ヨーロッパで交渉する時間はほとんどない。さらに中国とバーレーンは連続開催だった。つまりバーレーンGP後からスペインGPまでの3週間が、新たな契約を結ぶため、両者にとって今季最初で最大のチャンスとなるはずだ。
だが、ここに来てフェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表が意味深な発言をしているため、ハミルトンの契約更改はもう少し先になるのではないかという声もある。フェラーリ側の発言とは「ドライバーは誰でもいつかはフェラーリに乗りたいと思うもの。だから我々は常にドアをオープンにしている」というものだ。しかも、これは「ハミルトンと契約するつもりはあるか?」という質問に対する答えだった。
イタリアのジャーナリストは「フェラーリがハミルトンに100億円以上を支払うことはない。それができるのはメルセデスだけ。おそらく、ハミルトン側がメルセデスとの交渉を有利に進めるためのブラフだろう」と予想している。また「アリバベーネはライコネンとの契約を希望しているが、おそらくオブションが切れる夏ごろまで引っ張るつもりではないか」とも語った。
ドライバーのシートはトップチームから埋まっていく。現在コンストラクターズ選手権でトップ2に位置するメルセデスとフェラーリが、ストーブリーグならぬプールリーグもリードしていくことは間違いない。
(尾張正博)