金曜日のFP2から、メルセデスはフェラーリのロングランペースに威圧されていた。赤いマシンはおそらく、自分たちほど燃料を搭載してはいない。しかしソフトを履けば0.5秒速いラップタイムでセッション最後まで走り続ける様子を見ると、速さにおいても安定性においても「レースではフェラーリが速い」と認め、対応策を取るしかなかった。DRSゾーンで抜かれないためには、ストレート速度を伸ばすセットアップを採用せざるを得なかったのだ。タイヤには厳しいが、フェラーリの後ろで走行することになると、もっと厳しい。ブレーキが酷使されるバーレーンで、それはブレーキにとってもギリギリの選択だった。
対するフェラーリでは、セバスチャン・ベッテルのドライビングが作動温度の高いソフトに合っている一方で、ライコネンのドライビング、とりわけドライバーのフィーリングはミディアムに合っていた──上海の第3スティントでも証明された傾向だ。ソフトを履いた予選ではベッテルが上手くタイヤを作動させてラップをまとめてくる。しかしミディアムを履いたロングランでは、作動温度領域の低いタイヤがライコネンの“無理強いしない”スタイルに、ぴったりと合う。結果、キミにはソフト/ミディアムを組み合わせた作戦の選択肢が広がり、攻めるフェラーリとしては攻撃のバリエーションを幾通りも用意することが可能になった。フェラーリのふたりが役割分担するわけでなくとも、守る立場のメルセデスにとってはカバーするのが難しい環境が生まれた。
4番手という偶数グリッドから好スタートを切ったライコネンは、ロズベルグが前のベッテルにスタックする様子を見ると即座にアウト側のラインを選んだ。バーレーンの1コーナーではコース幅を活かすのが鉄則──スピードを維持してアウト側からアプローチすれば2コーナーで先行することができる。しかし、その後ストレート速度を生かしたロズベルグはDRSを使って4周目にライコネン、9周目にベッテルをパス。「あそこで少しタイムをロスした」とライコネンは説明するが、見事だったのは、その後のレースの組み立てだ。