今回のメルセデスAMGは、コース上でフェラーリを比較的簡単にオーバーテイクすることができたため、ロズベルグが受けるダメージは大きくはありませんでした。しかしこの選択は、命取りになる可能性もありました。
中国GPのように、先にロズベルグを入れ、ハミルトンを次に入れるという戦略を採っていれば、ベッテルのアンダーカットは防げたはずです。しかも、もしかしたら最終的にライコネンに2位を奪われることも、避けられたかもしれません。メルセデスAMGは「どうせすぐに抜けるだろう」と思っていたのかもしれませんが、ちょっと疑問の残るシーンでした。
フェラーリがメルセデスAMGを苦しめた要因“その2”は、ライコネンのタイヤ戦略です。ハミルトン、ロズベルグ、ベッテルの3人は、ソフト→ソフト→ミディアムという順序でタイヤを履きました。しかし、ライコネンだけはソフト→ミディアム→ソフトという順番にタイヤを履き、最終的にはロズベルグを抜いて2位表彰台を獲得しています。
なぜこの戦略が成功したのか? ひとつにはライコネンがミディアムを履いた第2スティントのペースが、非常に速かったということが挙げられます。当初、ソフトタイヤの方がミディアムタイヤよりも、1周あたり1.5〜2秒程度速いと思われていました。しかし、第2スティントのライコネンのペースは、ソフトタイヤを履く3人と比較しても、同等かそれ以上の内容でした。しかもミディアムタイヤのデグラデーション(タイヤの性能劣化によるラップタイムへの影響)は小さく、その結果上位との差は縮まり、さらにより長い距離を走ることに成功しました。ライコネンはこの時、ミディアムタイヤをいたく気に入り、最終スティントでもミディアムを履くことを希望します。しかし、チームの選択は“ソフト”。ライコネンはこれに反対しますが、結局チームの判断とおりソフトを履き、それが功を奏すことになります。