なおベッテルのミディアムタイヤ装着時のペースは、メルセデスAMG勢より約1秒遅いものでした。しかしこれは、悲観するものではないと思います。おそらく、ウイリアムズに合わせてペースをコントロールしていたのでしょう。ベッテルがウイリアムズの前に出た時点で、メルセデスAMGのふたりはすでに遥か前方。これを追うのはリスクが高すぎる。今回は3位をしっかりと確保しよう……チームがそう考えても、決しておかしくないと思います。現に、レース終盤にマッサがペースを上げるのと、それに合わせてベッテルもペースアップ。しっかりと差をキープしたまま、チェッカーフラッグを受けています。
マッサはレース後、「ピットアウト直後にダニエル・リカルド(レッドブル)につかまり、タイムをロスした」と語っていますが、これが無くても、フェラーリの前でフィニッシュするのは難しかっただろうと思われます。メルセデスAMGが現状もっとも速いとして、その後ろは2番手がフェラーリ、3番手がウイリアムズと、明確な順位が付いているように見えました。
ところで、ベッテルのチームメイトであるキミ・ライコネンは、2ストップ作戦を選択しました。これはおそらく、レース中に戦略を変更したのだと思われます。スタート直後にトロロッソのカルロス・サインツJr.と接触し、大きく順位を落としてしまったライコネン。そのため、フェリペ・ナスル(ザウバー)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、サインツJr.の後方に、しばらく閉じ込められることになります。サインツJr.はなんとかコース上で交わすことができたものの、ナスルとリカルドはなかなか抜けない……“ならば先にピットインしてアンダーカットを狙おう”ということなのでしょう。しかし、タイヤ交換に手間取ったことで、この作戦もあまり効果的にはなりませんでした。ただ、タイヤを交換した後のライコネンのペースは、メルセデスAMGに匹敵する内容で、これも今季のフェラーリの速さを裏付けるデータのひとつになりそうです。