その忠告通り、2014年シーズンの途中でフェルナンデスはギブアップ、チームを新しいオーナーであるスイスと中東の投資家集団エンゲーベストに売却した。この売却に関しても売り手と買い手の間で問題が起こり、現在は管財人の手に委ねられている。フェルナンデスからケータハムF1チームを買い取ったエンゲーベストは、ケータハムF1チームを第三者に転売して利益を得ようとした。とにかく、この手の輩が跋扈するのがF1パドックである。
しかし、ここで改めて書いておくが、今回ケータハムとマルシャを襲ったF1チームの経営難は、何も今に始まったことではないということ。F1グランプリの長い歴史の中では何度も何度も繰り返され、チームは生まれては消え、買い取られては売り飛ばされてきた。まあ、いわばF1グランプリの世界では日常茶飯事である。参考にいくつかのチームを挙げておくと、オーナーが逮捕されたアンドレアモーダ、エンジン代を支払えなかったフォルティコルセ、30億円の負債を抱えて倒産したプロストを初めとして、カウーゼン、ライフ、オニクス、パシフィック、リアル、シムテック……と枚挙に暇がない。
ではなぜケータハムのトラブルがこれほど取り沙汰されるのだろう? その答えは明白だ。それはとりもなおさず、小林可夢偉の所属するチームだからだ。小林はザウバーから1年のブランクを経てケータハムに加入したが、ファンからの寄付金を持ち込み、ノーギャラでレースを走るという、どえらいことをやってしまった。今や情熱だけでF1グランプリに留まっているといっても過言ではない。ただ、力のある小林をもってしても、ケータハムのマシンの性能の低さでは打つ手が無く、最後尾を、唇を噛みながら走るしかなかった。そして、そこへチーム崩壊の危機が訪れたのだから、なにをか言わんや、である。どこまで不運なドライバーなんだろう、なんて小林は可哀想なんだろう、とファンはヤキモキするのだ。