インターミディエイトでギャンブルしなければ、勝てた――?「優勝はたぶん無理だったと思うけど、2位は絶対に可能だった」レース後の会見、マックス・フェルスタッペンはこんなふうに素直に答えていた「でも、ときには少しギャンブルしてでも勝ちを取りに行かないとね」
最初のギャンブルは、マーカス・エリクソンの事故による13周目のセーフティカー出動時。ウェットからインターミディエイトに交換したフェルスタッペンはこのピットインによって3番手から4番手にポジションを落とした。リスタートの際にキミ・ライコネンがクラッシュしたことによって3番手を取り戻したが、ほぼ同時にレースが赤旗で中断されたためギャンブルの成果はプラスマイナス・ゼロになった。
ライコネンのクラッシュにより赤旗が導入された
LAT
2回目のギャンブルは2番手を走行し、ルイス・ハミルトンとの間隔が少しずつ広がっていた43周目。レッドブルは再びインターミディエイトでの挑戦を決断した。3周前にインターミディエイトに交換したダニエル・リカルドがファステストを塗り替えるペースで走り始めたからだ。ところが5番手に後退したフェルスタッペンが再び攻撃にかかろうというタイミングで、フェリペ・マッサがクラッシュ――レースはまたもやセーフティカーに先導されることになってしまった。
不運だったのは、このセーフティカー中に微妙に雨量が増したこと。ウェットタイヤでさえ「すごく難しかった」ホームストレートへの上り坂は、インターミディエイトでは「運転不能」な区間となった。2度目のギャンブルは失敗。
リタイアしたマッサがファンの声に送られながらピットに戻り、フェラーリの“旧友”たちからも労いの言葉を受けていたころ、レッドブルのピットとドライバーの間ではミーティングルームのような会話が続けられていた。タイヤ交換に入るならどちらのタイヤが良いか訊ねるチーム、「100%、ウェットのほうがいい」と答えるフェルスタッペン。
「問題は最終セクターだけなんだ。それまでの区間で稼いだタイムを全部失ってしまう。このタイヤ(インターミディエイト)だと、最終セクターはボートに乗ってる感じだ」
セーフティカーの後方ですでに隊列が整っていたのだから、ピットインすると大きくポジションを落としてしまう。他のマシンをすり抜けて挽回することができるか訊ねられたフェルスタッペンは「目指すところだ」と答えていた。「僕には、他と違うラインがあるから」
そして54周目、3度目のピットインで再びウェットタイヤ――しかし他のマシンよりずっとフレッシュなタイヤに履き替えたところから、フェルスタッペン劇場が始まった。