この2人がVSC中にピットストップを済ませ、さらにサインツがマクラーレン・ホンダの2人より先にピットインしていたため、16周目と17周目にピットインしたアロンソとバトンがコースに復帰すると、エリクソン、パーマー、サインツの後ろに回ることになってしまった。そして、この隊列がマクラーレン・ホンダにとって、地獄のレースとなってしまう。
というのも、縦隊の先頭を走っていたエリクソンのストレートスピードがパーマーよりも速く、パーマーのストレートスピードはサインツよりも速かったからである。エリクソンの後ろでパーマーとサインツはDRSを使用。せっかく1秒以内に入っても、前のマシンもDRSを使用しているため、なかなかオーバーテイクすることができなかった。
「われわれのほうがペースは速かったと思いますが、抜くまでのスピードがなかった。特にザウバーが今日は速かった……」と長谷川総責任者は語った。
それでも、アロンソはピットストップ戦略を変えて後半追い上げてサインツを攻略。バトンは実力でサインツとパーマーをオーバーテイクしたが、そのときにはエリクソンとの差は10秒以上も広がってしまっていた。
「レース後半に、フェルナンドはICEの不調に悩まされて出力のデチューンを強いられ、ジェンソンはERSの温度上昇が見られたことから、レース終盤に最大のパフォーマンスを発揮することができませんでした」(長谷川総責任者)というパワーユニット側の小さな問題があったことは確かである。
しかし、抜けなかったのは問題が起きる前で、むしろ問題が起きていた後にオーバーテイクしていることからも、この問題がメキシコGPの結果に与えた影響は、それほど大きいとは思えない。
メキシコGPでポイントを獲得できなかった敗因は、ほぼ全員が1ストップ作戦を可能にした1周目のVSC導入だったのである。
(Text : Masahiro Owari)