今宮雅子氏によるスペインGPの焦点。バルセロナではレッドブルに移籍したばかりのマックス・フェルスタッペンが、18歳らしからぬレースで初優勝をつかんだ。レッドブルの作戦判断には疑問も残るが、ウイナーの実力は本物。主役以外にとっても、特別な週末となった。
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若いというだけで批判されたドライバーが、18歳という年齢によって、今後きっと誰にも破ることができない最年少ウイナーの記録を樹立した。
マックス・フェルスタッペン、1997年9月30日生まれ──。2008年イタリアGPのセバスチャン・ベッテル、2003年ハンガリーGPのフェルナンド・アロンソのときと同じように、稀有な条件がすべてそろって最年少勝者が誕生した。ベッテルやアロンソの場合と異なるのは、ふたりの先輩がポールポジションからスタートし、2位以下に十分な差をつけて初勝利を飾ったのに対して、フェルスタッペンは4位スタート、2位キミ・ライコネンに対して0.6秒という僅差で勝利をつかんだ点だ。速さより、作戦とレースコントロールの巧さによって築かれた勝利だった。
34周目に2セット目のミディアムタイヤに履き替えた時点で、残り32周を走り切らなくてはならないと理解していた。35周目にはライコネンもピットインし、36周目のふたりの間隔は3.9秒。それが40周目には2秒、44周目には1秒まで縮まった。
「ピットに入った時点で、このタイヤで最後まで走り切らなくてはならないと、わかっていた。今日はフェラーリのほうが少し速いことも。だから最初の10周は攻めないでタイヤ管理に集中し、彼が追い上げてきても反応はしなかった。そこからは、ギャップをコントロールするレースだったね」
慎重に攻めるライコネンが、いつDRS圏内まで迫ってくるかと、みんながドキドキしながら見守っていた頃、フェルスタッペンはフェラーリのリヤウイングが開くことなど気にせず、ただタイヤを労わることに全力を注いでいたのだ。48周目以降、ほとんどすべてのラップでライコネンがDRSを作動させて勝負をかけても、動じなかった──。
「最後の10周は氷の上を走っているように滑った。でも最終セクターをうまく走ってシケイン出口で優れた加速を得ることが、すべてだったからね。ここバルセロナでは多くのレースが、そういう勝ち方で決まっていたと思う」
66周の流れ、3つのスティントで抑えるべきポイントと、カタルニア・サーキットの守り方。若さと攻撃性で強烈な印象を与えてきたドライバーが、優勝経験豊富なベテランのような守りのレースに成功した。