金曜日の練習走行からすべてのセッションでトップタイムをマークしていたメルセデスのルイス・ハミルトンが、中国GPの決勝レースを制して今季2勝目を飾りました。今回のレースでは前回のマレーシアGPで一矢報いたフェラーリのセバスチャン・ベッテルも、力負け。チームメイトのニコ・ロズベルグも、ハミルトンにプレッシャーを掛けることすらできない、完敗でした。
今回のレースで明らかになったのが、タイヤの違いによる、チームの勢力図です。中国GPはソフトタイヤとミディアムタイヤのコンパウンドが使用されましたが、このコンパウンドの違いが、レースで大きなギャップとなってリザルトに直結しました。それが象徴的だったハミルトンとベッテルを軸に、レースを振り返ってみましょう。
お互い、3周使用のユーズドタイヤでスタートしたハミルトンとベッテル。しかし、ハミルトンにとってはまずは意識しなければならないのは、チームメイトの2番グリッドのロズベルグです。フォーメーションラップを終えて、アウト側のPPグリッドに着いたハミルトンはマシンを極端にイン側に向けて、ロズベルグを牽制します。ここまで完璧な週末を迎えていたハミルトンにとって、トラブルやアクシデントを除けば、このスタートが唯一の勝負どころがこのスタートでした。ステアリングを切ったときに起こるフロントタイヤの抵抗をわずかでも抑えるため、1コーナー、というよりもロズベルグの鼻先を奪うためにマシンの姿勢を整えて、そして難なくホールショットを奪いました。
ベッテルも一瞬、ロズベルグのアウトサイドにマシンを並びかかりますが、ここはインを抑えたロズベルグが順位を守り、予選グリッドのまま序盤戦が進みました。ソフトタイヤを履いた第1スティントのハミルトンは、ベッテルよりもコンマ2〜3秒速いペースで周回を重ねます。オープンエアで十分なダウンフォース、そして熱くなったPUをクーリングしやすいアドバンテージを得ているハミルトンに比べ、ベッテルはロズベルグの後ろで熱気と乱流を受けていることを考えれば、ベッテル&フェラーリはハミルトンと一見、同等のペースで周回できている状況でした。
第1スティントでは9周目を過ぎて両者ともにタイヤがタレて、ラップタイムが落ち始めたところでベッテルがアンダーカットを狙いにハミルトンより先にピットインに向かいました。ソフトタイヤのペースは同等とはいえ、ハミルトンをコース上でオーバーテイクするのは至難の業、ベッテル&フェラーリはピット戦略で前に行くトライしました。しかし当然、この戦略に備えていたハミルトン&メルセデスもピットタイミングを合わせて対抗します。
この時に顕著になったのが、ピットイン前の周にプッシュしたインラップのタイム。ベッテルの1分44秒766に対して、ハミルトンは1分43秒689と、ハミルトンが1.1秒差の速さを見せました。プッシュしたら、やっぱりハミルトンは速い。言い換えれば、序盤のハミルトンはタイヤと燃費をセーブして周回していたことが分かります。