長年にわたって、FIAはフェラーリをひいきしていると言われてきた。ジャン・トッドがマックス・モズレーと親交が深いこと、そしてトッド自身が政治的野心を持っているとの見方が、こういった推測を高める結果になっているのは当然のことだろう。しかしトッド自身は事実は全く逆だと主張している。
「この世界では、フェラーリに有利になるように事が運ばれると言われがちだ」とトッド。「しかしそんなことはない。たいていは、フェラーリに不利に働いているよ。ポイントシステムにしても、予選方法の変更にしても、我々が強すぎるというので採用されたものだ。今年のレギュレーションも、我々の利益には反していた」
「個人的にはFIAのマックス・モズレーの行動には大賛成なんだ。彼は素晴らしい仕事をしていると思う。自分の仕事に打ち込んでいる。F1に携わる我々は、進化についてはそれがいかなるものであっても、合意に達することができない。それで結局彼がまとめていかざるを得ないんだ。時にはそれがうまくいくが、そうでない時もある。ほとんどの場合は、フェラーリにとってベストではないと思うときでも、彼のポリシーを尊重し、彼に行動を起こしてもらうべきだと考えてきた。そういうことは何度もあったよ。やろうと思えば反対できたんだろうが、それは余計なことだと思った」
トッドは、チームボスたちが、将来についての話し合いの中でどれだけの結果が出せるのかは疑問だと考えている。
「彼らの話し合いでどういう成果が出せると思う? ゼロだよ」
トッドはデスクの上のカップを使って、たとえ話をした。
「たとえば、このカップを動かすという決定を下そうとする。そうすると4時間もかかったあげくに、カップを動かすことができないといった具合だ」
「F1はビッグビジネスであり、素晴らしいスポーツであり、最高のショーだ。浮き沈みはあるが、魅力的なビジネスだと思う。しかし、このビジネスに携わっている人々のほとんどが、年をとりすぎていると思うね。我々は変わらなければならないし、活気付けが必要だ。もちろん私を含めてね。若くフレッシュな人たちが現れて、いいアイデアを提供してくれたり、率直な意見を聞かせてくれたりすると、嬉しい。F1に必要なのは、こういうことなんだと思う。バーニー(エクレストン)は素晴らしい仕事をしてくれているが、いつかは解決法を見つける必要があるだろう」
元フェラーリドライバーのエディー・アーバインとジャン・アレジがいずれも新チーム立ち上げのプロジェクトへの関与がウワサされており、ゲルハルト・ベルガーも再びマネージメントの立場に立つのではとささやかれている。これについてトッドはこうコメントしている。
「エディーのことは好きだが、私には彼の幸運を祈ることしかできない。この仕事に真剣に取り組むと、生活が一変する。F1をよく知っている彼やゲルハルトのような人物は、“新しい血”となってくれるだろう。ミハエルだけは、ここに名前が挙げられることがないだろうね。彼は頭が切れすぎる」