フェラーリのジャン・トッド監督は、ホッケンハイムでのドイツGPで、ミハエル・シューマッハーが今季11勝目を挙げたことで、特別な喜びを味わった。
この勝利によって、シューマッハーは、2002年に樹立した年間11勝の自己記録に並んだ。今年はまだ、あと6戦も残っているのだが。
「この勝利は、あれほど大勢の、スクーデリアとウチのドライバーのファンの前で達成できただけに、いっそう素晴らしいものだ。ドイツは、我々にとって非常に重要なマーケットでもあるしね」と、トッドは、これだけ勝ってもまだ優勝には特別な意味があることを認めた。「私たちは常に前を見ている。興味があるのは、これからのことであって、過去に起こったことではないんだ。過去に起こったことにも興味はあるよ――もし、それがつらい出来事ならばね。だが、よい出来事なら――我々は進み続けなくてはならない。競争はとても厳しいのだから」
チームの多くのライバルたちが、接近してきていると感じるかと問われて、トッドは次のように答えた。「レースは毎回、大変だよ。成功を収めるには、様々な要素が複合的に関係する。だからとても難しいんだ」
しかしトッドは、チームがホッケンハイムにやってきたとき、すでに自信を持っていたことを認めた。「コンペティティブだろうということは、分かっていたんだ。私たちは、気温の予想が同じくらいのヘレスでテストをしてきたし、ブリヂストンを履けばコンペティティブだろうと分かっていた。ブリヂストンの人たちは、素晴らしい仕事をしたよ」
いつもどおり、トッドはブリヂストンを、他の勝因と共に賞賛した。「偉大なドライバー、コンペティティブなマシン、信頼性のあるエンジン、スピードと安定性のあるタイヤ、そして一流のチーム。これらが勝利を生み出す要因だよ」
今回は、オーバーテイクのせめぎ合いが多く見られた、素晴らしいレースだった。トッドは、この生き生きしたイベントの原因を次のように考えている。「多くは、コースのおかげであり、作戦のおかげであり、タイヤのおかげだ。通常は、先頭に出られるような最速のマシンを2日間かけて作るものだ。だから、レースでたくさんのオーバーテイクが見られるはずはあるかい? オーバーテイクが作りたければ、グリッドを逆順にしてスタートさせればいい。そうすればたくさんのオーバーテイクが見られるだろうが、自然なことではないね」
しかしトッドは、ヘルマン・ティルケのデザインで3年前に改修されたコースレイアウトも、効果があったと考えている。「もちろん、そのおかげはあるよ。現在のブレーキングでは、ブレーキングが遅いとオーバーテイクは難しくなる。たいていのドライバーは、同じ距離でブレーキングするからね。だから、オーバーテイクは難しい――ほかのフォーミュラとは違うんだ」
しかしながら、オーバーテイクのほとんどが起こった場所で、チームのもう一台のマシンはチャンスを失うことになった。ルーベンス・バリチェロは、ブレーキを遅らせすぎたかもしれないと認めているが、タイヤをロックさせてデイビッド・クルサードに衝突し、予定外のストップを余儀なくされた。「ルーベンスは残念だった。今季初めてポイント圏外でのフィニッシュになったからね」と、トッドは説明した。
F1はこれから、次戦のハンガリーまで3週間の休暇に入り、テストも禁止される。フェラーリが今でも、ライバルに対して十分な差をつけているかと聞かれて、トッドは次のように述べた。「いくつかのレースでは、彼らは我々の前に行くかもしれないと思うよ」