メルセデスは、ひとりのエンジニアがフェラーリ移籍を前に極秘書類とデータを盗んだとして法的手続きを開始した。
高等法院の書類により、来年初めからフェラーリに加入する予定のベンジャミン・ホイルに対し、メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)が訴訟を起こしていることを、Bloombergと英Autosportが確認した。
ホイルは2012年、メルセデスのF1エンジン製造などを担当するHPPに、F1エンジニアリング部門のリーダーのひとりとして加入した人物。
ホイルは2014年5月、2015年末までの契約終了をもって退職するという意志を示し、その直後にHPPは彼がフェラーリに移籍する意向であることを知った。
そのためホイルは今年4月、F1プロジェクトから外され、メルセデスのDTMプログラムを担当するよう通知された。HPPは彼が接する「知的財産を管理したかった」と述べている。ホイルはPCのデータを消去され、新しいメールアドレスやログインデータが与えられ、F1の情報に触れることはできなくなり、オフィスの一部への立ち入りも禁止された。
しかしHPPがこれ以降から9月24日までの間、外部の専門家を雇って調査した結果、ホイルがF1の極秘情報を含む書類のハードコピーを持ち出したことが分かったという。
ホイルはHPPのサーバーにあったF1極秘情報をPC、個人所有の携帯電話、microSDカード、タブレット、外付けハードディスクドライブに保存、さらに外部ウエブサイトにアップロードもしていたという。
その極秘情報には今年のハンガリーGPに関する報告書、今季9月14日までのHPPのF1エンジンのマイレージおよびダメージのデータ、レースデータ解読コードなどが含まれていた。
HPPの主張では、ホイルは調査をかく乱するような行動を取ってデータをセーブした事実を隠したという。
こういった行為はすべてホイルとの契約内容に違反するものであるとして、HPPは彼の「不正行為」によって彼とフェラーリは不正なアドバンテージを得た可能性があると主張した。