いよいよ23年ぶりのメキシコGPが開幕する。しかし、舞台となるアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは以前と同じではない。サーキットの改修工事を手がけたヘルマン・ティルケは、新コースの特徴を次のように説明する。
「最も大きな違いは『ペラルターダ』と呼ばれた最終コーナー、大きなバンク角を持つ180度コーナーのレイアウトが大きく変更されたことだ。この変更には、ふたつの理由があった。ひとつはコーナーの外側に十分なランオフエリアを設けるためのスペースがなかったことだ」
1991年にアイルトン・セナが、ここで挙動乱してコースアウト、タイヤバリアに激突したあと、横転した。当時はランオフエリアの狭さは問題にならなかったが、現在のF1基準は満たせなかったとティルケは言う。それならコースを内側に移動させるという方法もあったが、メキシコGP復活が決まったときには、すでに内側に野球場が建てられ、巨大なスタンドにコースの移動を阻まれてしまった。それが、最終コーナー変更のふたつめの理由だ。
「そこで主催者が『野球場の中を走らせるようなレイアウトにしたらどうか?』と薦めてきたんだ」と、ティルケは説明する。
それ以外も、ティルケは「新しいアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは23年前とは似て非なるものだ」という。「まずコース幅が全体的に広がった。かつては8メートル程度しかなかったが、全周に渡ってコースの幅員を12メートルに拡張した」
また、最終コーナー以外の基本的なレイアウトは旧コースを踏襲しているものの、微妙に位置を変えているという。
「たとえば1コーナーと4コーナーは以前よりも奥へと移動し、オーバーテイクしやすくなるようにした。さらにコーナーリングスピードが落ちるので、マシンがより長い時間、観客の前を走るというメリットも生んでいる」
さらに7コーナーから11コーナーも微妙にコーナーのR(半径)を変えた。
「これは単純にランオフエリアを確保するための措置だ」とティルケは説明する。
もうひとつ、23年前と違うのは路面である。アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスはバンピーなサーキットとして悪名高かったが、すべて改修された。ただし最終的に舗装が完了したのは3週間前。きれいに見えるが、路面を這うようにして走るF1マシンにとっては、わずかなデコボコがあっても影響は大きい。果たして、金曜のフリー走行ではどうなるのか。セッション後のドライバーたちのコメントが気になる。
(尾張正博)