イギリスGPを前に、元ワールドチャンピオンのナイジェル・マンセルがF1を酷評した。人々がF1をくだらないと言っても、自分はもうこれ以上F1を擁護できない、というのだ。
英タイムズ紙に対して、1992年のワールドチャンピオンであるマンセルは、F1の現在の状態に“失望している”とも語った。
「人々が私のところにきて、今のF1のくだらない有様は何なんだ、というのを聞かされるのは、もうウンザリだ。F1は長い間、私にとって大切なものだったから、私は擁護しようとしてきた。しかし、もうこれ以上、こんな擁護しがたいものを擁護し続けることはできないよ」
「事実上、コースでの追い越しが存在せず、本物の興奮がほとんどないようなものを、どうして擁護できるんだい?」
「重要な追い越しは、ピットストップの際に起こる。そうなると結局、ピットストップの間の3回のスプリントレースになってしまう。ちゃんとした競争のあるグランプリ、ドライバーの腕の競い合いではなくてね」
「モナコとインディアナポリスでは、いくつか事故があったが、エンターテインメントとしての総合的な価値は、まったく十分ではない。こんなことを言うのは悲しいが、レギュレーションがF1をダメにしているのを見ると、ひたすら唖然としてしまう。それはレースだけのことではない」
「予選が退屈なものに変えられてしまったことで、ファンは困惑し、ショックを受けている。何人かのチームオーナーさえも、F1は滅茶苦茶で、嫌になると言っていた。彼らは、グランプリに行くのが、もう楽しくないというのだ。それは驚くべきことだ――しかし、重要なことだよ」
「私はF1で起こっていることを把握し続けているし、いつも腰を下ろしてグランプリのスタートを見るが、何周かするとそれ以上見ていられなくなって、スイッチを切ってしまう。それほどひどいんだ」
しかし、マンセルはすぐに、フェラーリが悪いのではないと指摘した。
「まず第一に、フェラーリやミハエル(シューマッハー)を非難しているのではない、ということを強調しておく必要がある」と、マンセル。「彼らは素晴らしい仕事をしている。今季だけではなく、何シーズンにもわたってね。彼らはその成功に値するよ」
「だが、レギュレーションは、ほかのチームの助けにはならず、信じがたいほどの信頼性を誇るフェラーリを後押ししている。ミハエルが最後にエンジン破損に見舞われたのは、3年前のことだ。ということは、ワンエンジン・ルールで、一番影響が少ないのはどこのチームか? もちろんフェラーリだよ。たとえ、グリッドポジションと引き替えにエンジン交換が必要になったとしても、フェラーリはその不利を挽回できる唯一のチームだ。これはまったく子供だましみたいなルールだし、戦いの場はちっとも平等になっていない。金の節約になるとかいう議論は受け入れられないね。そんなのは、開発やテストの費用と較べれば、何でもないんだから」
「根本的な問題は、マシンがあまりにもドライブしやすいということだ。経験のほとんどない若いドライバーでも、F1に乗って、ちゃんと運転できてしまう。F1はモータースポーツの頂点であり、最高の技術を集めたものだが、ドライビング技術がとことん試される場でもあるべきだ。F1はもはや、そういう場とはなっておらず、結果として、ドライバーの評価はほとんど不可能となっている」
「マシンから技術的な装置を取り除いて、ドライバーの制御に委ねてみなければ、どんなドライバーも評価することはできないよ」