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【津川哲夫私的F1メカチェック】近代工作機械が生み出した独自パーツ。レッドブル・ホンダRB15が採用する最先端ディスクベル
2019年9月21日
今シーズンのF1マシンに追加されたエアロ規定によって、スルーアクスル(アクスル内部が空洞になっていてパイプ状に内側から外側へトンネルの様に貫通しているアクスル)が禁止となり、ホイール内、つまりホイールのインターナルエアロが大きく変化した。
このエアロ規定に加え、ブレーキダクトの形状規定が重なり、ブレーキディスク、キャリパー、アクスベアリング、センサー、電気系等アップライト周りは大きな変化を強いられることになった。冷却空気流の効率を得るために、空気流の動線が大きく変えざるを得なくなったのだ。
このコラムの初期に登場したメルセデスのトラス型アップライトもその変化のひとつだが、今回は写真のレッドブル・ホンダのRB15のフロント部のディスクベルに注目だ。
このディスクベルは回転方向に会わせて角度の付いたスリットが二重に切られている。フィン状のスリットはホイールが回転することで空気流を排出するファン(扇)の役割をしている。
一見、ブレーキディスクの冷却効果を想像するかもしれないが、ここから吹き出される空気流は主にアクスルベアリングと電気系・補機類等の冷却空気流に使用される。フロントタイヤとマシンの間に入る前方からのエアフローは、このディスクベルの裏側からディスクの内部に入り込み、外周に空けられた莫大な数のベンチレーションホールから外側へ抜け、ホイールドラムの外周を通ってホイールスポークの間からマシンの外側へ排出される。
多くのチームがディスクベルにこういったスリットを開けているが、ファン形状をしているのはレッドブルRB15のみ。この形状は回転方向が限定されるので、同じディスクベルを左右で共有することはできない。そしてこのファン型ディスクベルは冷却効果だけでなく、排出空気流を増すことによって、わずかだがホイールからのアウトウォッシュ(タイヤ外側からマシン後方へ流れる空気流の改善)への狙いも考えられる。
このディスクベル、構造はドライブペグホールを含めて3段の、それもファン部分は3Dホールで実に複雑な形状で処理されている。この加工はマルチタスク・ツールステーションや、3Dプリンター等の近代工作機械を駆使しなければ造ることはできない。近代F1の工作技術の進歩はアナログ人間にはとてもついては行けない領域まで進んでいる。
(Tetsuo Tsugawa)
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