バーニー・エクレストンのF1に及ぼす支配力が、少し弱まるかもしれない。F1の親会社に不当な発言力を行使しているとして、3金融機関がエクレストンを訴えていた裁判で、アンドリュー・パーク裁判官は金融機関側に有利な判決を言い渡したのだ。
ロンドンの高等裁判所での審議の後に出た判決により、3金融機関(バイエリッシェ・ランデスバンク、JPモーガン、レーマン・ブラザーズ)は、代表をフォーミュラワン・ホールディングズ(FOH)の役員会に送ることができることになった。これにより、各金融機関はF1の運営方法に関して、より大きな発言力を得られそうだ。とはいえ、この論争は、F1の日常的な運営を統括しているフォーミュラワン・アドミニストレーション(FOA)とフォーミュラワン・マネージメント(FOM)までは及んでいない。
経営不振のメディア会社キルヒを救済した3金融機関は、現在SLEC株の75%を所有している。SLECは、FIAとの複雑な契約によってF1の商業権を握っている持ち株会社だ。残りの25%が、エクレストンの家族経営によるバンビーノ・ホールディングズの所有となっている。しかし、問題は、SLECがFOHを所有し統括しているのに、エクレストンが役員会メンバーの多数派を握っていることだ。エクレストンは2002年に、ルーク・アルガンドとエマニュエーレ・アルガンド−レイを“ディレクター補”として役員に指名した。
スピード・インベストメンツの名称で活動している3金融機関は、この人事に抗議し、役員会で持ち株の多さに見あうだけの多数派を占めることを求めていた。パーク裁判官は、エクレストンにはこの抗議を退けるだけの論拠はないという判断を下し、アルガンドとアルガンド−レイの指名は不正であったと述べた。
「私の判断では、スピードの主張が正しいことは明らかであり、それゆえ、スピードの求める判決を下さねばならない」と、裁判官は判決の冒頭で述べた。
とはいえ、この件はここで決着がつくことにはなりそうもない。エクレストンには、判決に控訴する権利があるからだ。もしエクレストンが敗訴すれば、金融機関側が役員会の多数派を占めることになるだろう。しかし、FOAとFOMを通じてF1全体を統括できるようになるためには、さらなる訴訟が必要となるかもしれない。エクレストンは、自分の権力を守るために、金融機関側と取り引きをして75%の持ち分を買い戻そうとするか、あるいは各チームと結んで、GPWCの運営するF1に対抗して自分が設立するシリーズへの支援を取りつけようとする、ということも考えられる。しかし、金融機関側は、マニュファクチャラー連合との取り引きに前向きだと見られている。それは主に、F1における自分たちの持ち分が無意味なものとならないように、マニュファクチャラーの離脱を防ぐためだ。