――優勝の後、どんな風にお祝いをしましたか?
ヤルノ・トゥルーリ(以下JT):正直言って、理想的なお祝いとはいえなかったね。レースが終わった後はすごく疲れていて、寝たかったんだ。でも、王室主催のパーティーに出席しなければならず、家族や彼女と会えたのは4時間もたってからだった。みんなをずっとレストランで待たせてしまったよ。(このパーティーは)絶対に出席しなければならないものだし、みんなが憧れるものだ。でも、僕は華やかなことが苦手で、こういった行事は好きじゃないんだ。正直言って、家族と一緒に出かけて普通のディナーをとって、その後すぐに寝てしまいたかったね。結局家族とは10分くらい会っただけで、寝てしまった。でもそれが最高のお祝いだったよ。僕ってかなり変かな?
――今どういう気分ですか?
JT:うぬぼれるつもりはないけど、何よりも満足感を感じている。肩から重荷を下ろせた感じだ。ずっとこの調子でいきたいよ。夢がかなった気分だ。7年間も待ったんだからね。もう無理なのかという感じさえしたが、僕は諦めなかった。こんなチャレンジングな場所で、最高に難しいレースで、初優勝を飾れたんだから、なおさら満足感を感じるね。最も魅力的なレースであり、長いレースであり、誰もが勝ちたいと夢見るレース。そこで僕は週末を通して優勢だったんだ。最高だよね。本当に心からうれしいよ。
――1996年にはF3で優勝まであと一歩のところまでいきましたよね?
JT:ポールを取って、スタートからレースをリードして、3周後には3秒半ものギャップを築いていた。でもその後ダンパーにトラブルが出て、その2周後にはデフがトラブってしまった。それでも20周は持ちこたえたが、スピードがずいぶん落ちたから、ロウズヘアピンで押し出されてしまった。でも、そこまではトップを走っていたし、(そのままいけば)勝てたはずだよ。
――スペインGPを終え、モナコには自信を持って臨みましたか?
JT:いつだって、自分たちは優勝できるという自信を持っていなければダメだよ。特にモナコでは、望みを持っていいだろうね。というのは、ここでは思わぬことがよく起きるから。ここはドライバーズサーキットだし、ウチのマシンがこの手のコースに合っているのも分かっていた。マシンの改良も進んでいたから、かなり自信を感じていたよ。僕らは全員、勝てるかもしれないという気持ちを持ってモナコに向かったんだ。
――木曜日でその期待はさらに高まりましたか?
JT:木曜は、すべてが予定どおりに運んだよ。僕らは夢が実現するのではという気分になり始めた。マシンには満足していて、不満点はなかった。バランスはもうちょっとだったけど、それもコンマ2〜3秒の話だったし、結局は土曜日に向けて調整できた。モナコの前に、「ここで必要なのはいいマシンだ」と言ったけれど、それは実際にはマシンに対する信頼なんだ。そして、その信頼を持つことができた。
――これまで惜しいところで逃してきましたが、とうとうポールを獲得できました。どういう気持ちでしたか?
JT:これまで5、6回は取り逃してきたんじゃないかな。それが全く思いがけないことに、モナコでついに手にすることができた。思いがけないというのは、僕らはかなり燃料を積んでいたからだ。アタックにいって、1周を終えてみたら、すごいタイムだった。でも、誰か燃料を軽くしたドライバーがもっといいタイムを出すものだと思ったよ。(ポールは)ずっと望んできたものだから、ようやく取れてすごくうれしい。モナコは特別な場所だ。レーシングコースとして最高だとは誰も思っていないが、誰もがモナコで優勝したい、ポールポジションを取りたいと思うんだ。
――勝てるのでは、という考えはありましたか?
JT:そういう思いがあったともいえるし、なかったともいえる。ここ2、3年、モナコではポールシッターは勝っていなかったんだ。それを変えよう、ポールシッターの優勝を実現してみせよう、と僕は言ったね。当然だろ? モナコでポールを取ったら、優勝しなきゃ。
――レース前、チームはどんな様子でしたか?
JT:かなり緊張していたよ。フラビオ(ブリアトーレ)はすごくナーバスになっていた。僕はいつもは朝10時にパドックに行くんだ。なのに彼は9時に電話してきて、「どこにいるんだ、どこにいる?」って言うんだ。チームのみんなが優勝するチャンスは大いにあると確信していたし、勝ちたかった。ウチのチームは基本的にチームオーダーはないんだ。ただ、一番速い者が勝つ、ということになっている。で、今回は僕が一番速かった。
――すべて予定どおりに進みましたか?
JT:僕はベストを尽くしたよ。スタートを決め、チャンスはすべて生かして後方との差を広げた。でもバックマーカーが協力的じゃなかったから、フェルナンドとの差がかなり詰まってしまった。数秒あったギャップが2、3周でまったくなくなってしまったんだ。でも自分は速いと分かっていたから、本当に必死にプッシュした。いくつか不利なこともあったよ。2回のセーフティーカー、2回のスタート、いくつかのアクシデント。でも、集中力を途切れさせることなく、自信を失うことなく、走り続けた。ここでの以前のレースを思い起こしたりしていたら、勝てなかっただろう。何か悪いことが起こって……。言ってること、分かるだろ?
――フェルナンドがクラッシュしたのは分かりましたか?
JT:次の周にトンネルを抜けた時にようやく知ったよ。「うわぁ、何があったんだ?」と思った。普通はあそこでクラッシュはしないからね。
――それでプレッシャーはなくなりましたか?
JT:かなりね。初優勝まで7年というのは、かなり長い。でも、イタリアではこう言うんだ。「遅れても、実現しないよりはまし」ってね。そしてそれがモナコで実現した。他のどこでもない、モナコという特別な場所で。
――ミハエルがクラッシュした時、ほっとしましたか?
JT:かなりがっかりしたよ。だって、彼はあの後ピットインする予定だったんだ。レース中僕はこう考えたよ。みんなに「トゥルーリはミハエルがクラッシュしたから勝てたんだ」って言われちゃうんだろうなぁって。