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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第3戦】力不足のマシンで良い仕事をした。今は焦って攻めすぎないことが重要

2022年4月20日

 2022年、アルファタウリの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っていく。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第3戦オーストラリアGPについて語ってもらった。


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 人生のなかでは、能力があって、勤勉で、積極的な人間が、きちんと物事を進めてもうまくいかないことがある。挑戦し続けて、どれだけ頑張っても、目指している結果が手に入らず、その理由も分からないということは、珍しいことではない。


 昔、若いドライバーたちの面倒をみていたころ、彼らに対して常にこう言い聞かせていた。自分がいい走りをして、ミスをほとんど、あるいは全然犯さなかったにもかかわらず、マシンやチームが力を発揮できなかったり、単純に不運だったりして結果を出せなかったのだとしたら、何も気にする必要はない、と。私の豊富な経験によると、ほとんどの場合、シーズンの最後には、運と不運のバランスは取れるものだ。つまり、いつまでも不運ばかりは続かない。


 もちろん、たまに並外れて運のいいドライバーもいる。ミハエル・シューマッハー、ルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペンなどが持ち合わせている、いわゆる“チャンピオンズ・ラック”というやつだ。一方で、恐ろしく運が悪くて、才能に見合った結果を出せなかったドライバーたちもいる。ニュージーランドのレジェンド、クリス・エイモンは、その世代において最速ドライバーのひとりであり、何度もレースでトップを走ったが、一度も勝つことができなかった。マリオ・アンドレッディはかつて、ユーモアたっぷりにこう言ったことがある。「クリスが葬儀屋になったら、誰も死ななくなるのになぁ」


 とはいえ、ほとんどのドライバーはほとんどの場合、何度も不運なレースが続いたら、その後には幸運に恵まれることが多い。


「雑談はそろそろおしまいにしましょう」って? いやいや、私は別に意味なくダラダラと話をしているわけではない。私には物事を正確に観察する能力があり、私が発する言葉には、いつだって重要な意味があるのだ。この話は、角田裕毅が今置かれている状況につながっている。オーストラリアGPの彼は、リザルト上は良い順位をつかめなかったが、彼は何も心配する必要はない、という話だ。オーストラリアGPの週末の彼のパフォーマンスを見れば、私の言いたいことが分かるはずだ。


 まず指摘しておきたいのは、裕毅がメルボルンに来たのも、あのトリッキーなアルバートパーク・サーキットを走ったのも、今年が初めてだったということだ(これについて、有名コメンテーターが誰も触れなかったのには驚いた)。

角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第3戦オーストラリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 同じ状況のドライバーは他に3人いた。周冠宇、ミック・シューマッハー、ニコラス・ラティフィだ。そのなかで予選で一番速かったのは裕毅だった。しかも次の周冠宇との差は0.7秒だ。さらに、フリープラクティスと予選で、角田はチームメイトのピエール・ガスリーと同等あるいは上回るタイムを出してみせた。相手は、トップチームで走るのがふさわしいと言われ、非常に高く評価されているガスリーだ。角田はFP1とFP3でそのガスリーより速いタイムを記録したのだ。予選でも非常によくやっていた。Q1ではガスリーから0.16秒差、Q2では、少し態勢を乱しながら0.2秒差だった。


 そしてレースではまたしても見事なスキルを見せて、1周目にバルテリ・ボッタスをパスしてみせた。ところがその後は全くうまくいかなかった。タイヤのデグラデーションがとても高く、AT03のバランスが全くなってなかったからだ。ガスリーですら、さほどいい走りをすることができず、運良く2ポイントを稼ぐにとどまった。

2022年F1第3戦オーストラリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 角田はオーストラリアで何ひとつ失敗しなかったが、15位フィニッシュでノーポイントという結果に終わった。今、彼が避けなければならないことは何か。フランツ・トスト代表がその点はしっかり言い聞かせてくれるものと思うが、「マシンのパフォーマンス不足を補おうとしてプッシュしすぎない」ということが重要だ。


 思えば昨シーズンは、イモラから裕毅の状況が悪い方へと転がり始めた。あの時のマシンは容易に予選Q2に進める力があったのに、Q1初めに愚かなクラッシュをしでかしたのだ。彼が今しなければならないのは、プッシュしすぎずに、ベストの走りをすることだ。それができるかどうかが、優れたドライバーと偉大なドライバーの分かれ目になる。ベストドライバーたちはマシンの限界ぎりぎりで走るが、決して限界を超えることはない。


 だから裕毅よ、これからもメルボルンの時と同じアプローチで行くがいい。アルファタウリがしっかり仕事をするならば、いずれはポイントを獲れる日が来る。彼らが失敗したとしても、君は、幸運の女神が味方してくれる時を待ちながら、ベストを尽くしていけばよいのだ。

2022年F1第3戦オーストラリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第3戦オーストラリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


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