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【F1オーストラリアGP無線レビュー】嘆き、焦るハミルトンと2度のプラン変更
2017年3月29日
ルイス・ハミルトンが圧倒的な速さでオーストラリアGPのポールポジションを獲得した時、今年もまたメルセデスの独走になるのだと誰もが思った。そして翌日、スタートで彼が首位を守ったとき、このまま退屈なレースになるのだと誰もが落胆したことだろう。しかし、そうはならなかった。異変は早くも4周目に起きていた。
ハミルトン(以下、HAM)「グリップに苦しんでいる」
ハミルトンは無線でそう訴えてきた。
レースエンジニアのピーター・ボニントンからは、2番手のフェラーリ、セバスチャン・ベッテルを引き離すために1分28秒台フラットのペースでプッシュしろという指示が出されていたが、ハミルトンにはそれだけの速さがなかった。
HAM「1分28秒フラットで走るのは不可能だよ」
メルセデスGPチーム(以下、MER)「了解、とにかくギャップを築き続けてくれ」
9周目にはベッテルがファステストラップを記録し、両者は一進一退の攻防でギャップは1秒台のままほとんど変わらない。
HAM「タイヤがオーバーヒートしているんだ」
ハミルトンが抱えていたのは、全体的なグリップ不足でタイヤ表面が滑ることによるオーバーヒートの症状だった。これ以上ペースが上がらず、タイヤのライフも限界に近付いていると考えたメルセデス陣営は、17周目にピットインさせることを決断した。このまま走り続けても、いずれベッテルが先にピットインすればアンダーカットされてしまうことは明らかだったからだ。
MER「ギャップは1.7秒。このギャップをキープしてくれ。これがクリティカル(危険な状態)だ」
HAM「これ以上何も残ってないほどプッシュしてるよ」
ピットアウトしたハミルトンに、チームから指示が飛ぶ。しかしハミルトンの前にはまだピットインしていない5番手レッドブルのマックス・フェルスタッペンが見えてきた。ハミルトンの苛立ちは募る。
MER「フェルスタッペンを抜かなければならない」
HAM「リピート、リピート! 声が小さすぎるよ!」
MER「ベッテルを捕まえるためにはフェルスタッペンを抜く必要がある」
HAM「あ〜〜〜、できるかどうか分からないよ」
■抜けない今季のF1マシンとハミルトンの苦しみ
フェルスタッペンもいずれピットインするだろうと踏んでいたメルセデス陣営だったが、フェルスタッペンは思いのほか長く引っ張り、首位ベッテルより1秒近く遅いペースで走る彼に付き合わされることになってしまった。
フェラーリ(以下、FER)「タイヤはとてもヘルシーだ。このままプッシュし続けろ。落ち着いていけ」
逆に首位ベッテルはウルトラソフトタイヤを長く保たせることができ、レースエンジニアのリカルド・アダミが冷静にそう伝える。
HAM「コイツを抜ける場所なんてないよ、どうしようもない!」
MER「OK、プレッシャーを掛け続けろ」
ハミルトンが苦しんでいる頃、ベッテルは23周目にピットインを行ない、彼らの目の前でコースに復帰し、見事に“オーバーカット”を成功させて首位を奪い取ってみせた。
25周目、フェルスタッペンがピットインしてようやく前が開けたハミルトンに対し、メルセデスは「OK、我々は“プランB”への変更を検討している」と、つまり2ストップ作戦の可能性を伝える。一方ベッテルは安定したペースでレースをコントロールしており、チームからは「まだ先は長いから、落ち着いていけ」とそのままゴールへマシンを運ぶだけだという指示が飛ぶ。
本来であれば22周目まで引っ張ってスーパーソフトに換えるのがセオリーであるところ、17周目にピットインしてしまい、残り40周をソフトタイヤで走ることになったハミルトンだったが、無理をしてチームメイトのバルテリ・ボッタスに2位を奪われるよりも、首位追撃を諦めることでなんとか1ストップのままで走り切り2位を守る作戦に切り替えることにした。
MER「タイヤは落ち着いてきている。最後に少し苦しむかもしれないがプランAのままでいこう」
HAM「僕のタイヤは周りと較べてどうなのか教えてくれ」
MER「バルテリ(ボッタス)より8周、ベッテルより6周古い」
ハミルトンは「かなり早い段階で追いかけるのは辞めて2位をキープすることにしたんだ。そうでなければ2位を失う可能性さえあったんだからね。ダメージリミテーションのレースだった」と明かす。こうしてベッテルの開幕優勝は決まったのだ。
ピットストップまでは大接戦のレースだった。フェルスタッペンに捕まらなければ、ハミルトンが勝っていたか? そうかもしれないが、メルセデスがフェルスタッペンに引っかかることを承知の上で17周目という早い段階でピットインさせなければならなかったのは、自分たちのペースが伸びず、背後にベッテルがピタリと付けていたからだ。
「彼の方が速いコーナーもあったし、逆に僕の方が追い付けるコーナーもあった。彼がトラフィックに捕まったという幸運もあったけど、プッシュしてプレッシャーを掛け彼に早めのピットストップをさせたのは僕らだ。もし15周走ったところで大きなギャップがあれば、彼は(タイヤが厳しくても)そのままステイアウトしてレースをコントロールし、前が空いたところを狙ってピットインしていただろうからね。僕らがとても良いレースをやったということなんだ」
ベッテルがそう語るように、フェラーリとベッテルは勝つべくして勝ち、メルセデスとハミルトンは負けるべくして負けたのだ。
(Text:Mineoki Yoneya)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 219 |
2位 | ランド・ノリス | 150 |
3位 | シャルル・ルクレール | 148 |
4位 | カルロス・サインツ | 116 |
5位 | セルジオ・ペレス | 111 |
6位 | オスカー・ピアストリ | 87 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 81 |
8位 | ルイス・ハミルトン | 70 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 41 |
10位 | 角田裕毅 | 19 |
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1位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 330 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 270 |
3位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 237 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 151 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 58 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 28 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 8 |
8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 7 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 2 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
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