契約承認委員会の裁定によりジェンソン・バトンがBARで3度目のシーズンを迎えることになり、ウイリアムズBMWにはレギュラードライバーのシートの空きができた。来季はレギュラーの座を失うかと思われたドライバーたちは、このシートを獲得しようと色めきだっている。
同チームの候補者リストに入っているとみられるニック・ハイドフェルドは今年、どう比べても競争力に劣るジョーダンのマシンで潜在能力を証明してみせた。モナコとカナダでポイントを獲得した他、もっと上位につけるチームにいて然るべきと思わせるドライビングを披露した。
ハイドフェルドはかなり早い時点でウイリアムズ入りが囁かれたことがあった。シーズン中盤、負傷したラルフ・シューマッハーの代替ドライバー候補として名前が上がったのだ。しかしエディー・ジョーダンが当然のごとく移籍料を要求したため望みは叶わなかった。予定されていた評価テストにも出られず、アントニオ・ピッツォニアがラルフの代役を務めて活躍し、2005年のマーク・ウエーバーの僚友候補として、ハイドフェルドの強力なライバルとして浮上することになった。
他に噂に上っているのはミカ・ハッキネンとデイビッド・クルサード、またBARのテストドライバーであるアンソニー・デイビッドソンと、リストの列は長いが、ハイドフェルドは、レースに出ない役目でもオファーがくればと考えているという。
「上位チームのシートが空くのだからね」とブラジルGP前にドイツ人記者に語った彼。「ウイリアムズとは夏にたくさん話し合ったが、予定されたテストは実現しなかった。僕としては彼らと来年ぜひ仕事をしたいし、場合によってはテストドライバーでもいいと思っている」
もしハイドフェルドがチームの第3ドライバーとして契約すれば、いったんレースドライバーの座を退いてから再びグリッドに戻ってきたオリビエ・パニスと同じ足跡をたどることになるかもしれない。アレックス・ブルツとリカルド・ゾンタも同様のルート上にいるが、パニスのようにレギュラーの座にはまだ返り咲けていない。ウイリアムズの第3シートは、ピッツォニアがウエーバーの僚友として正ドライバーとなることが認められれば空くことになるかもしれない。長くテストドライバーを務めるマルク・ジェネがどこか他のチーム、できればフェラーリで同じ職務に就きたいと望んでいるらしいためだ。
ジョーダンの将来はいまだはっきりせず、望みはトヨタとの契約にかかっているが、そうなるとライアン・ブリスコーか日本人ドライバーがジョーダンのシートのひとつを埋めることになるとみられ、ハイドフェルドは来季はほぼ間違いなく新たな雇用主を見つけなければならなくなりそうだ。今月終盤にウイリアムズのテストに参加し、好印象を残してなんとかチャンスを得たいところだ。
「ウイリアムズでのチャンスはある」と、マネージャーのウェルナー・ハインツが、ドイツのメディアに対し語ったと報道されている。「もしハイドフェルドがウイリアムズのテストを受けられれば、すべてに可能性が出てくるので、11月終盤に彼が車に乗れるよう願っている」
契約承認委員会の裁定により、ハッキネンとクルサードがウイリアムズドライバーの候補となり、ハイドフェルドにとってはテストドライバーが唯一の選択肢になるかもしれない状況だ。ウイリアムズのテクニカルチーフ、パトリック・ヘッドは、マーク・ウエーバーをまったくの新顔よりも、経験のある者と組ませたいと認めててもいる。こうなるとデイビッドソンは事実上リストから除外される。また、ヘッドはクルサードの再雇用は考えていない旨を明らかにしている。