ブラジルGPの土曜日予選、フェラーリのルーベンス・バリチェロがポールポジションを獲得し、地元サンパウロの観衆は大喜びしたことだろう。しかし、翌日曜日、天候は彼とフェラーリのタイヤパートナー、ブリヂストンの味方をしてくれず、バリチェロはブラジルGPにおける4人目のブラジル人勝者になることができなかった。
普段はフェラーリに勝利をもたらしていたブリヂストンタイヤが、今回レースを左右する重要な鍵となった。レース序盤、コンディションが微妙に変化するにつれ、ブリヂストンはライバルであるミシュランに出し抜かれたのだ。フォーメイションラップの30分前から小雨が降ったため、湿った路面を考えたうえでタイヤチョイスが行われたが、さらに気温が下がったことで、ブリヂストンタイヤが最適な温度まで温まるのに時間がかかってしまったのだ。
しかも、路面は急激に乾きはじめ、インターミディエイトタイヤで走り始めたドライバー全員が、早めのピットストップを余儀なくされる展開となった。
「レースの序盤は、我々にとって厳しいシナリオとなった」と、フェラーリのテクニカル・ディレクター、ロス・ブラウン。「ウエットタイヤで走るには路面が十分に濡れていなかったから、すぐにピットストップを行う必要があると分かっていた。また、タイヤが温まって、ドライバーが思うようなペースで走れるようになるまでに、時間がかかってしまった。その時点で優勝のチャンスを逃したね。我々はドライでもウエットでもかなりいいパフォーマンスを発揮できるが、今回はそれほど得意ではない、その中間のコンディションだったんだ」
バリチェロは1周目からアドバンテージを失い、予選3位からスタートしたキミ・ライコネンがリードを奪った。タイヤが温まった3周目、バリチェロは再びトップに立った。だが、そのわずか1〜2周後に、レースを左右するポイントとなる局面が訪れた。4周目、ミシュランユーザーたちがピットに向かう中、フェラーリがバリチェロを呼び戻したのは、そのさらに2周後だったのだ。
「皆がひととおり1回目のピットインを終えた時点で、バリチェロはかなり順位を下げることになってしまった。それを考えると、彼は素晴らしい仕事をしたと思う」とブラウンは断言した。「彼はラルフ(シューマッハー)、(フェルナンド)アロンソ、佐藤(琢磨)を抜き、我々もピットでできることを精一杯やった。それに、今日はマシンも速かった」
ブリヂストンの菅沼寿夫テクニカル・マネージャーは、レース前に降った雨がブリヂストンタイヤにとって不利に働いたことを追認した。
「レースのスタート時点で、トリッキーなコンディションに対峙することになった。変化しやすいコンディションには対応できていたが、我々の強さを十分に発揮することができなかった」と菅原氏は述べた。「我々は最終的に勝つことはできなかったが、こういった結果をいつも積極的に受け止めている。将来のタイヤ開発の方向性を判断するときに、どういった面で改良が必要なのか、はっきりと見えてくるからだ。今は前を向き、2005年に向けた開発プログラムに集中している。ブリヂストンタイヤが、F1でベストであることを証明し続けるつもりだ」