F1はヨーロッパをしばし離れ、北米2連戦にむかいます。世界選手権全18戦の第8戦にあたる今週末のカナダGPは、モントリオールのサーキット・ジル・ビルヌーブで開催されます。1978年、ミシュランタイヤを装着したフェラーリを駆り、ここでF1初勝利を飾った地元出身の伝説的ドライバーの名を冠したコースです。同じようにミシュランタイヤでカナダGPに勝利したドライバーには、1981年ジャック・ラフィット(タルボ・リジェ)、1984年ネルソン・ピケ(ブラバムBMW)、2001年ラルフ・シューマッハ(BMWウイリアムズF1チーム)がいます。今週末のミシュランは、74回目のF1勝利を目指します。
ピエール・デュパスキエ(ミシュラン・モータースポーツディレクター)
「モントリオールは高速のストレートと低速コーナー、そしてヘビーブレーキングの組み合わせです。タイヤメーカーにとってはシーズンで最も難しいサーキットのひとつです。昨年、私たちのタイヤは明らかな技術的アドバンテージをパートナーチームにもたらしましたが、さまざまな要因が重なりあって勝利を逃しました。今年も同じ強さを再現できると自信を持っています」
パスカル・バスロン(ミシュラン・F1プログラムマネージャー)
「私たちは前戦ドイツGPに続き、今回もソフト方向のコンパウンドを使用します。しかし、1周のうちにタイヤにかかる荷重がとても均等だったニュルブルクリンクに較べると、モントリオールのサーキットの性格は大きく異なっています。高速コーナーはなく、ヘアピンや低速のシケインからの急加速が連続します。このためリヤタイヤにかかる負担が非常に大きくなります。ほんのすこし温度が上がっただけでもタイヤはひどく痛めつけられてしまいます。その上グリップの低い路面なので、あまり硬めのコンパウンドは使えません。このように、モントリオールでは難しい妥協を迫られます。タイヤメーカーにとっては悩ましい問題です。タイヤを最終的に決めるときも、きわめて微妙な判断になるでしょう。私たちは過去数年間のレースと、ポールリカールで最近行ったテストセッションのデータを分析して、3種類のドライ用コンパウンドを選びました。これでモントリオールの難しい落とし穴を避けられるはずです」
マーク・ウェバー(ジャガー・レーシング)
「モントリオールは、性格としては市街地コースに近い。例えばレース週末の初めにはとても埃っぽいことが多いんだ。僕たちは“トラクション・イベント”と呼ぶんだけど、低速コーナーからの立ち上がり加速で最大限のグリップを必要とする場面がとても多い。トラクションコントロールやサスペンションのセッティングをうまく仕上げておいて、レースでのスティントを走るあいだにタイヤに過剰なストレスがかからないようにすることが肝心だ。コーナーはほとんどが低速だけど、そこへの飛び込みはかなり高速からになるので、減速でのタイヤのパフォーマンスも大事だ。安定したブレーキングのためには、適度に硬めのフロントタイヤが必要になる。でも、ミシュランはF1の厳しい要件を的確にこなしているから、僕はいい形に仕上げられると思っているよ」