今季序盤戦で不振にあえぐマクラーレンが、2004年シーズンへのアプローチを見直して、MP4−19の大幅な設計変更を行うのではないかとの観測が説得力を増しつつある。今シーズンのチャンピオン候補とされていたキミ・ライコネンは、ここまでの3レースでまだ一度も完走さえできていない。
ライコネンのリタイア原因はすべて最新型のメルセデス・ベンツV10エンジンに関連するものだったが、チーム内部からは問題があるのはエンジンだけではないとの声も上がっているようだ。さらに英国のガーディアン紙は、今シーズンのどこかの時点で、現在のMP4−19に代えてまったく新設計のニューマシンが投入される可能性も示唆している。
ライコネンはいまやミハエル・シューマッハーの後継者とも目されているだけに、その実力をもってしてもこの不振となれば、責任はエンジンのパワー不足と考えられがちだ。また、フェラーリ、ウイリアムズ、BAR、そしてルノーにさえもパワーの面で劣っているのは否定しがたい事実と見なされているが、チームメイトのデイビッド・クルサードは以前からこのシャシーの生来の欠点を無視するのは間違いだと主張してきた。
「結局のところ、ひとつの要素だけが優れていても勝てるクルマにはならないんだ。タイヤ、エンジン、ドライバー、そしてシャシー。この4つのすべてが調和しなければならない。ひとつでも欠けていたらダメなんだ」
ライコネンもこの意見には同意しており、フロントランナーと対等に戦えない理由は「いくつかの設計上の問題点の組み合わせ」によると述べている。
もしもマクラーレンがマシンの設計を完全に見直すとすれば、昨シーズン、ついに実戦に投入されることのなかったMP4−18に続いて、またしても技術陣の手痛い失態と見なされることになろう。今年のMP4−19は、テストではしばしば鋭い速さを示したものの、優れたパフォーマンスを発揮するのはエンジンパワーが重要なファクターにならないコースに限られるとされていた。
こうした不振の原因は、間近に迫った新しい本拠(「パラゴン」)への移転、あるいはメルセデスと提携して進めているスポーツカー開発計画にあるとも言われるが、ロン・デニスはこうした見方をキッパリと否定した。
「私たちも時には間違いを犯すことがある。それは避けがたいことだ」と、今年のマシンについて彼は述べた。「だが、私はこの組織に絶対的な信頼を置いている」