F1技術解説ハンガリー編:“悩みの種”リヤの渦流が特殊な環境下で可視化
2020年7月30日
今年のハンガリーGPは湿度の高さと例年よりはるかに低い気温のおかげで、普段滅多に見られない現象に遭遇できた。リヤウイング両端から発生する、渦流である。
空力性能を極限まで突き詰めたF1マシンには、特徴的な渦流(ボーテックス)が発生する。フロント部分に起きるのが、ボーテックスY250と呼ばれる渦流である。フロントウイングおよびノーズの特殊な形状による気圧の異なる二つの気流が、渦流を巻き起こす。
ほぼ同じ現象が、マシン後部でも起きている。ここで、翼端板がないリヤウイングを想像してみよう。ウイングのプレートによって高圧と低圧の二つに分かれた気流は、すぐに混ざり合ってグチャグチャの乱流になってしまうはずだ。エンドプレートと呼ばれる翼端板の役割は、二つの気流ができるだけ混ざり合わず、後方にきれいに流れて行くのを助けることにある。
それでも最小限の気流の混ざり合いは、どうしても起きてしまう。高圧の気流が低圧方向に流れようとする結果、細かな渦流が発生する。これは上述したように、湿度が高く、比較的低温の環境下でしか可視化されない。一連の写真で明らかなように、この渦流はプレートの両端、翼端板の上端付近で発生している。
肉眼ではウイングからやや離れたところで発生しているように見える渦流だが、「実際にはこれが、リヤウイング上部で大きなドラッグを起こしている」と、レーシングポイントのテクニカルディレクター、アンディ・グリーンは言う。
「ダウンフォースは増えずに、ドラッグだけが増えるという厄介な現象だ。以前は翼端板に縦の切れ込みを入れて、発生を防いでいた。しかし去年から、禁止になってしまった」
各チームは今も、その代替アイデアを模索中だ。ただしハンガロリングは長いストレートがないため、たとえドラッグが大きくてもそれほどタイムには影響しなかったはずである。
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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