爽やかな青空に包まれた日曜日のコンディションが、レッドブルリンクにたくさんの罠を仕掛けた。曇りがちだった金曜、土曜と比べて22℃という気温はさほど変わらなくとも、晴天の日曜日には路面温度が大幅に上昇。多くのマシンのリヤタイヤにブリスターが発生した。
標高約700mの山間部の気候では、太陽が顔を出すと一気に陽射しが強くなる──。標高800mのインテルラゴスや森林のなかのスパ・フランコルシャンと比べても特徴的なのは、レッドブルリンクでは空気がとても澄んでいて軽いことだ。そのため、路面温度は太陽に一喜一憂するように反応する。
2016年の予選開始時、路面は52℃まで上昇した。17年のレースでも、コースイン時に36℃だった路面温度がスタート直前に急上昇。48℃まで上がった。
こうしたシュピールベルクの特徴を、F1チームはもちろん把握していた。今年の問題は、日曜の路面温度が上がったことより、金〜土曜の路面温度が低く気温との差が小さかったことだ──。金曜も土曜も路面温度は気温+5〜10℃程度。ところが日曜のスタート時には、気温22℃に対して路面が48℃に到達した。
空気密度が薄いぶん、パワーユニットに厳しい仕事が要求されるサーキット。地面すれすれの位置を走行するF1マシンでは、パワーユニットもハイドロ回路もブレーキも、すべてのシステムが路面からの熱に苦しむ。熱対策はパフォーマンスを犠牲にするため、最適な“妥協点”を見出すことが必須だが、土曜までのコンディションではその見極めが困難だった。日曜のレースでは、攻めの姿勢のワークスチーム、トップチームが“物理の法則”の厳しさを目の当たりにする結果になった。
11周目、ニコ・ヒュルケンベルグのマシンから白煙が上がった──。ターボは、空気の薄い高速コースで最も酷使されるパーツのひとつだ。
XPB Images
そこからわずか3周後、2番手を走行していたバルテリ・ボッタスのマシンがギヤを失ってリタイア。
「(マックス)フェルスタッペンとのギャップを広げるためにペースを上げろ」とチームから指令が飛んだ直後のことだった。原因はハイドロプレッシャーの低下。