ルノーは最新仕様のエンジンを擁して、今週末上海で行われるF1最終戦に臨もうとしている。だが、彼らの主張によれば、この最後のV10ユニットはコンストラクターズタイトル獲得を狙った特別な仕様のエンジンではないという。
「それが新品のエンジンであれ、2レースのサイクルの途中であれ、シーズンを通じての私たちの戦略は、ドライバーにパフォーマンスと信頼性の最良の妥協を提供することだ」と、ルノーのデニ・シェブリエは言う。「もちろん、中国では信頼性の要求レベルは多少異なってくる。エンジンは1つのレースウイークエンドだけを走ればいいからだ。今回のエンジンの仕様はその点を考慮している」
「だが、このEスペックエンジンは、私たちのテクニカルプログラムの独立した一部分ではない。“ワンレースエンジン”というと、まるで別のエンジンを開発したかのように思われそうだが、実際にはそうではないんだ。(ワンオフのスペシャルエンジンを製作するのは)リソースの使い方として効率的とは言えなかった。ここへ来てそれが必要になるという保証はできなかったわけだからね……」
「その代わりに、私たちは中国GP用のエンジンを組み立てる仕様を決めるに当たって、一部のコンポーネントのライフを通常の1400kmではなく700kmに設定した。つまり、他のレースには使えないが、中国では使える仕様ということだ。こうした部品の一部はかなり重要なものなので、エンジンのスペックコードを変えて‘E’とするのに十分な変更だったが、それらの部品はこのレースのために特別に開発されたわけではない。別の言い方をすれば、このエンジンには700kmのライフを想定したコンポーネントが含まれているということだ」
「このエンジンは、より優れた総合的なパフォーマンスパッケージをもたらすだろう。つまり、単純にこれまでよりパワフルだというだけでなく、レースの週末を通じてのエンジンの使い方について、より多くのオプションを提供してくれる。ラップタイムにも明らかな向上が見られるはずだ」
「中国GPのグリッドに立ったとき、あるいはV10が最後にフィニッシュラインを横切る音を聞いたときに、私たちはきっとある種特別な感情を覚えるだろう。それはひとつの時代の終わりだからね。V8のサウンドはまったく別のものだ。つまり、私たちがエンジンに火を入れて、ガレージの中でエンジンの音を聞くという日常的なルーティンも、かなり違ったものになる。私たちルノーのスタッフは、17シーズンにもわたってV10エンジンの音を聞いてきた。それが来年からは違うものになるんだ……」
「私たちはV10のパイオニアであり、V10が標準規格になるまではライバルのV8やV12と戦ってきた。まもなく新しい時代が訪れようとしている。F1にV10というエンジンレイアウトを持ち込んだこと、そしてV10最後のシーズンに選手権を勝ち取ったことは、いわばF1の歴史におけるひとつの時代の始まりと終わりを明確に示した“ブックエンド”のようなものだろうね」