ルイス・ハミルトンが今季3勝目を挙げたバーレーンGP。今回も、ハミルトンが強さを見せつけましたが、メルセデスAMGとフェラーリの接近戦は、非常に見応えあるものでした。速さに勝ったのはメルセデスAMG。しかし、フェラーリの2台が戦略によって、その最速チームを苦しめたのです。中でも、特筆すべきシーンがふたつありました。それを分析してみることにします。
まずひとつめは、セバスチャン・ベッテルによる2度の“アンダーカット”です。アンダーカットとは、先行するライバルよりも先に新しいタイヤに交換し、その性能を最大限に活かして、順位の逆転を狙う……という作戦。今回のレース中、ベッテルは2度にわたり、メルセデスAMGのニコ・ロズベルグをアンダーカットしてみせました。
ベッテルはまず13周目終了時点でピットイン。続く14周目終了時点でロズベルグもピットインするのですが、12周目の時点で1.7秒あった差を逆転し、ベッテルが2番手に上がり、ロズベルグが3番手に下がっています。
ベッテルはこの時、タイヤを交換したことで、ラップタイムを1周あたり約3秒跳ね上げています。この効果で、ベッテルはロズベルグのポジションを奪い取ることができたわけです。メルセデスAMGがこれを避けるのは、まず不可能だったと言えるでしょう。
最初のアンダーカットは仕方ないとしても、2度目のアンダーカットは不可解です。ベッテルは32周目終了時点で2度目のピットインを行い、タイヤをソフトからミディアムに交換しています。メルセデスAMGはこれに反応して翌33周目にロズベルグをピットに迎え入れると思いきや、先にハミルトンを呼び込み、ソフトからミディアムへタイヤを交換しています。ロズベルグをピットに入れたのは、ベッテルのタイヤ交換から2周遅れた34周目。これでロズベルグは、ベッテルの先行を許してしまいます。