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【焦点】24.5秒差は偶然か、必然か

2014年3月31日

Mercedes

 メルボルンではニコ・ロズベルグがトップでチェッカーを受けた24.5秒後に、ダニエル・リカルドがゴールした。セパンでも、優勝したルイス・ハミルトンと3位セバスチャン・ベッテルの間隔は――2位ロズベルグを挟んで――やはり24.5秒。

 メルセデスの後方に大きく広がる、この差は偶然? 開幕2戦はコース特性もコンディションもまったく異なるため“トラブルなく走った場合のメルセデスとレッドブル・ルノーの差”がきっちり24.5秒と結論するのは乱暴だが、“与えられたエネルギーをもっとも効率良く使って最短時間でレース距離を走行する”という課題に対して、メルセデスが現段階でおよそ25秒のリードを築いていることは事実。パワーユニットだけでなく、車体の空力効率も含めて、1台のF1マシンとして最適な妥協点を探求した結果だ。今年の規則では、ダウンフォースも無償ではなく“燃費”という代償を支払わなくてはならないから――

 もちろん、メルセデスとて開幕戦のハミルトンのようにトラブルに見舞われると走れないし、セパンのロズベルグのようにリヤのグリップ不足に苦労するとレッドブルとの差は7秒ほどに縮まる。25秒はあくまで、チームが状況をコントロールし、自分たちの理想にもっとも近い“妥協点”で走行した場合の、現時点の差。大差ではあるけれど、メルセデスがもっとも順調にテストを進めてきたこと――彼らがもっともオプティマムに近い形でマシンを走らせていること――を考えると、絶望的な差ではない。

 だから、セパンでは予選後もレース後も、ベッテルの表情が明るかった。「去年のブラジルGP以来、初めてレース距離を走って」自分たちのスピードを確認することによって、25秒という目標がはっきり見えた。今の段階ではひとつひとつのレースがデータ収集の貴重な機会なのだから、メルセデスとて、むやみにペースを抑えて走行したとは思えない。

 フェルナンド・アロンソのフェラーリの場合は、メルボルン、セパンとも首位からおよそ35秒遅れてゴールした。シーズン中に大幅な進化が予想される今シーズン。「僕らが前進しても、他チームも同じように前進する」とアロンソが言うとおり、レースごとに全チームがスキルアップする。そう、メルセデスも含めて――だからハード面/ソフト面を合せて、ライバルより35秒分大きく前進しなければならない。2014年の真新しいマシンを、上手く使いこなす技を見出し、磨いていかなくてはならないのだ。

 こんなふうにレースを見ると、複雑なマシンの性能/100sのガソリンを、物理の法則に忠実にわずかなロスもなく使い切ったドライバーの素晴らしさがあらためてよく分かる。


 セパンのコース特性にも助けられて、コース上のバトルの質もメルボルンから大きく向上した。とりわけ、1~4コーナーは最高の“格闘技”の舞台――リカルドはスタート直後の混戦をすり抜けてベッテルの前に出ることに成功。最初のピットではアロンソの後ろでコースインしても、この区間でトラクションを得るラインを選び、見事に抜き返した。そしてアロンソはレース終盤、2ストッパーのニコ・ヒュルケンベルグをここで攻略。

 2本のDRSゾーンでは、最終コーナーでわずかに相手を先行させておくのが鉄則。お互いにそう分かっていて、滑りやすいマシンで駆け引きをするのは容易ではない。29~30周目、グロージャンとの攻防でいったんロータスを先行させながら、ホームストレートで反撃した小林可夢偉の技も絶妙――戦うスキルがトップクラスだから、キミ・ライコネンのフェラーリを相手にしても、ケータハムのマシンは輝きを放った。

 滑りやすくコントロールが難しい今シーズンのマシン。それでも、メルボルン‐セパンと雨の予選で速さを発揮したドライバーたちは、レース中にも要所要所でその技を発揮した。オーストラリアでは2位の結果が抹消、今回はピットの失敗と“危険なリリース”のペナルティ……というふうに、ドライビングとは無関係の不運を背負い続けるリカルドもそのひとり。落胆は大きくても「自分がこの2戦で行ったことは目標としたとおり」と言えるのは、彼が楽観的だからではなく、速くて強いからだ。

 そして、7位スタートから5位入賞を飾ったヒュルケンベルグは、チームを移籍してもマシンが変わっても、ウエットの速さ、接戦における攻防の巧さを発揮し続けている。最後はアロンソに抵抗できなくとも、2ストップ作戦は成功。スムーズなアクセルワークができるヒュルケンベルグだからこそ、メルセデス勢ではワークスに次ぐ活躍を見せた。

 ピットとドライバーの間の無線交信も頻繁な今年のレース。燃料コントロール作戦のためにピットからの情報は不可欠であるけれど、レースエンジニアからの言葉はドライバーを支え、集中力を途切れさせない意味もある。雨の予選中、湿度は99%に到達した。晴れれば、炎天下のコクピットは50℃を軽く上回った――こんなコンディションで、一瞬でも気持ちが散漫になるとミスを許容してくれないのが今年のマシンなのだ。

 そして、不快指数100%でレースを戦った後も、メカニックたちの撤収作業は深夜まで続いている。連戦のバーレーンに向けて、休息の時間はない。

(今宮雅子)




レース

7/5(金) フリー走行1回目 20:30〜21:30
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