トヨタのエンジン部門の責任者、ルカ・マルモリーニは、今シーズン導入された2レース同一エンジンのルールによってしばしば眠れない夜を過ごしたと語った。特に開幕当初は非常に辛かったという。
マルモリーニは、他チームへのエンジン供給も行った一年を振り返って、時には本当に限界まで押しつぶされそうなほどのプレッシャーに襲われたと認めている。
「開幕の2レース(オーストラリアとマレーシア)に向けての準備には自信を持っていた。信頼性と競争力を兼ね備えたエンジンを作ることができたと自負していた。だが、マレーシアGPも終わりに近づいた頃、つまりヤルノ(トゥルーリ)が2位を走り、ラルフ(シューマッハー)が5位を走っているのを観て、私はかなりナーバスになり、さまざまな思いが込められた複雑な気持ちで残りの数周を見守っていたよ。彼らがチェッカーフラッグにたどり着いたときには、その気持ちは幸福というものに変わったが」
「総じて、とてもタフなシーズンだったよ。チームとしての結果はとても印象的ではあったけれどもね。2つのレースの間に解決しなければならない問題は、それまでは無かったもので、想定外のものだった。それを解決するためにどのくらい我々が懸命の作業をしたかなんて想像がつかないだろうと思うよ。皆さんはそんな場合でも、管理された緊急事態なんておっしゃる」
だがシーズン中に起こった“主な”問題点については固く口を閉ざした。
「詳しいことは言うことはできないが、これだけは言える。寿命の長いエンジンを作るためには、部品の品質が非常に重要ということを学んだ」
「もちろん過去においても新しい部品はあり、それを自ら設計し、テストを行った。まことに素晴らしいことだ。エンジンが400kmもてばいいのでそれで十分だった。だが長い距離を走るためには、はるかに高い水準で品質管理を行わなければならないということがわかった。1500km以上の距離を走りきるためには、多くの時間が必要だった」
「以前なら、我々は1日でエンジンをチェックすることができた。だが今は1基のエンジンをチェックするのに1週間を要することもあるのだ。また1台のエンジンだけでは、統計的なベースを作り出すことはできない。少なくとも2台のテストが必要だ。そのために、問題対処には以前より時間がかかることになった。昔とは大きな違いだ。そして新しいものを創造するという点においては、消極的にならざるを得なかった。昔の方が今よりずっと、新しいものを導入するということに関してはずっとアグレッシブだったよ」