50年代に活躍したフランスのF1ドライバー、モーリス・トランティニアンが月曜、病院で亡くなった。享年87。26年間におよぶ現役生活中、さまざまなカテゴリーでステアリングをにぎる不死身の人生に幕を降ろした。
あるレースで燃料タンクにネズミのフンが入っていたためにリタイアを喫するというハプニングがあって以来、親愛を込めて“le Petoulet(ネズミのフン)”の愛称で親しまれたトランティニアン。1950年から64年までに通算80のグランプリレースに出場し(55〜58年を除く)、モナコで2勝を挙げるなどした。
フランス南東部のボクリューズ県で生まれ、兄弟の一人が亡くなった悲しみを吹っ切ろうと1938年にレースを開始、第一次世界大戦後、世界選手権制定前からグランプリに参戦を始める。1950年にはゴルディーニ・チームから2レースに出場したが、彼がこの年のレースに参加できたのは幸運の賜物だった。彼は1948年のスイスGPであわや大惨事という事故に遭いながら、1週間の昏睡状態から奇跡的な回復をみせ、1949年シーズン中にグリッドに復帰したのだ。
ノンチャンピオンシップの各レースで活躍しながら、1955年についにフェラーリにてF1での美酒を味わい、その後にも3勝。この中にはロブ・ウォーカーのクーパー・チームでのモナコの優勝も含まれる。こうする間にも彼はスポーツカーのドライバーとしても実力を発揮し、1954年のル・マン24時間レースにフェラーリから出場して2位、その5年後にはアストン・マーチンからも出場している。
彼はまたアストン・マーチンF1チームでも走り、世界選手権ではなかったが、バンウォール、ブガッティ、マセラッティ、ロータスとともに在籍チームのリストにその名を加えた。1964年についにF1を降り、1965年のル・マン24時間レースを最後に現役を引退していた。