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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第5回】アップダウンの激しいミック。予選のミスを取り戻せず、経験不足が影響した週末
2022年5月5日
2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。イモラでは今年最初のスプリントが行われたが、金曜日から雨が降る難しい週末に。ケビン・マグヌッセンはスプリントとレースの両方でポイントを獲得したが、一方のミック・シューマッハーはスプリントこそうまくやれたものの、予選と決勝では経験不足が露呈したグランプリとなった。そんなエミリア・ロマーニャGPの現場の事情を小松エンジニアがお届けします。
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2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP
#47 ミック・シューマッハー 予選13番手/スプリント10番手/決勝17位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選4番手/スプリント8番手/決勝9位
エミリア・ロマーニャGPでは、今年最初のスプリントが行われました。そのスプリントから振り返っていこうと思いますが、まずはタイヤ選択ですよね。ハースとウイリアムズの1台だけがミディアムタイヤで、それ以外は全員ソフトタイヤでした。
僕は個人的には、1〜3周目あたりまではソフトの方が速くて、それ以降はミディアムの方がいいペースで走れると考えていました。ところがチームのタイヤグループの分析では、ソフトタイヤの初期グリップのアドバンテージは確認できませんでした。ケビンのフィーリングもこの分析結果と同様でした。5周目くらいからはどちらのタイヤでも同じようなタイムになるし、13〜14周目あたりからはソフトのほうがタレてきて扱いにくいタイヤになります。ですからハースにはソフトに初期グリップのアドバンテージはないという結論でミディアムでスプリントを走ることに決めました。
でも蓋を開けてみればほとんどのクルマがソフトでした。どうして僕らだけソフトタイヤの最初の数周の性能を引き出せなかったのか解析しているところです。とはいえ、ケビンは4番手からスタートして順位をキープ、再スタートでも4番手を守ることができたので問題なかったです。一番懸念していたソフトのアドバンテージが活きる最初の数周も切り抜けましたし。しかしその後はペースが上がらず8番手でのフィニッシュとなりました。ミックはセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)の後ろで詰まっていたけれど、ベッテルを抜いた後はケビンよりいいペースで走り、10番手までポジションを上げてくれました。
ウチの場合はもしソフトを履いていたらもっと悪い結果で終わっていたかもしれません。それは上位を走っていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)やランド・ノリス(マクラーレン)を見ればわかります。ただもっと後方を走っていたドライバー達がどうだったのかは疑問です。中団ではミックをはじめ多くのドライバーがベッテルに詰まっていて、ベッテルより後ろのドライバーのソフトタイヤのタレ具合はあの状況では見えてきません。みんな最初の数周にアドバンテージがあるからソフトを選んだのだと思いますが、もっと選択が別れると考えていたのかもしれないですね。
■いつ赤旗が出るかわからない状況では、絶対に次があると思わないこと
エミリア・ロマーニャGPは金曜日から雨で、予選もウエットコンディションで始まりました。Q1ではケビンはいいタイムで走ってくれて、ミックもなんとかQ2に進んでくれました。Q1終盤はミックの方がいいコンディションで走っていたのですが、やっぱりまだケビンには敵わないです。それでもギリギリでQ2進出を決めたのでほっとしましたね。
ただミックがよくなかったのは、Q2でのアタック中にトサコーナー(ターン7)でスピードを出しすぎて出口で膨らんでしまい、そこでアタックをやめてしまったことです。このミスがコンマ4秒ほどのロスになりましたが、もしターン7以降も速度を落とさずにアタックを続けていれば、コンマ3秒くらいは取り戻すことができたはずです。そうすればケビン(1回目のアタックは1分19秒902)のコンマ1秒くらいのところまで近づけて、Q3進出も見えていた可能性はありました。
結局カルロス・サインツ(フェラーリ)のクラッシュで赤旗が出て、中断中に雨が降ったのでこれ以上のタイム更新ができず13番手で終わってしまいました。ミックは一度ミスをしても次のチャンスがあると思っていたのですが、天候が安定せず、さらにいつ赤旗が出るかわからない状況では「次があるから大丈夫なんて思っちゃダメ」と予選後にミックにも伝えました。ミスをしても攻め続けて、タイムを出せるときに出しておくことが大切です。
そして、それができていたのがマックス・フェルスタッペン(レッドブル)です。Q3では、彼のアタック中にバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)のコースオフによる黄旗が出ました。この時フェルスタッペンは黄旗区間ではちゃんと速度を落としながらも、残るコーナーをしっかりと攻めていたのでポールポジションを獲れたのです。この点はミックの経験不足が出てしまったのかなと思います。
一方でケビンは本当によくやってくれました。Q3の最初のアタックの際にアクアミネラリで飛び出した時には冷やっとしましたけれど、クルマの角度的にはコースに戻れそうだったのでなんとか戻ってきて、アタックをやり直して4番手となりました。ボッタスの赤旗後はセッション序盤よりも雨がひどかったので、最後のノリスの赤旗がなくてもケビンの順位は変わらなかったと思いますが、タイムを出せる時によくあのタイムを出してくれたと思います。
今回の予選はプランを立ててセッションに臨んでもすぐにインターミディエイトからドライに変わるだろうと予想していましたし、赤旗があればそこでまたプランは変わります。ドライで何周走れるのか、ガソリンの量はどうするのかというのも刻々と変わっていくなかで基本的に間違ったことはしていないと思っていますし、この結果を出せたので、これ以上楽しいことはないなと思います。僕はこういう状況での予選が好きで、こういうことがあるからこの仕事をやっているんだなと改めて実感しました。
■今のミックに必要なのは「雑音を排除して、やるべきことに優先順位をつけて取り組むこと」
決勝はインターでのスタートとなり、ケビンの方は序盤こそよかったものの徐々にグレイニングが起きてペースが落ちていきました。途中からは持ち直してくれて、ボッタスと同じくらいだったと思います。ただピットストップで問題があってベッテルの後ろでコースに戻ることに(同じ周にピットインしたボッタスも問題があり、彼もベッテルに抜かれました)。第2スティントではペースがよくなかったので、残念ながら今回は8〜10位あたりが妥当なリザルトでした。
ミックはスタート直後にフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とぶつかって彼のクルマを壊してしまいました。ミックのクルマにダメージはありませんでしたが、その後もミスがあり……。10番手といういい位置からのスタートだったのでポイントを獲って欲しかったのですが、ちょっと残念なレースでした。
今のミックは少しアップダウンが激しいなという状況です。この週末でいえば予選でミスがありセッション後には落ち込んでいて、スプリントでは順位を上げることができたのですが、レース後はまた落ち込んでいました。そういう意味ではケビンの方が落ち着いていますね。ケビンはアグレッシブに走らないとといけない時にはそういう走りもできますし、そういうクレバーさのようなものも今のミックにはありません。これも経験の差です。
ミックには、とにかく雑音を排除して、自分のなかで何を優先すべきなのかを考えて、たくさんのことをやろうとせずにひとつかふたつのことに集中して取り組んでほしいなと思います。プレッシャーもあるけれどそれも仕事のうちですし、いろいろな人からアドバイスを受けてもそのなかから自分に必要なものを選んで、自分のことに集中して落ち着いてやってほしいです。
(Ayao Komatsu)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 362 |
2位 | ランド・ノリス | 315 |
3位 | シャルル・ルクレール | 291 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 251 |
5位 | カルロス・サインツ | 240 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 189 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 177 |
8位 | セルジオ・ペレス | 150 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 62 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 31 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 566 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 537 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 512 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 366 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 46 |
7位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 36 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 14 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |