「よくやった。グッドジョブ!」というチームの無線に、大きくはっきりと「Yes !」と答えた。短いひと言に、2勝目を飾ったバルテリ・ボッタスの喜びが凝縮されていた。
最初から最後まで、順調に進んだオーストリアの週末。
「思いきりアタックするためには、コースとマシンに慣れて自信を築いていくことが何よりも重要だった」とボッタスは振り返った。
コーナー数が少なく、1周の距離も短いレッドブルリンク。しかし、ストップ&ゴーに見えるターン1や3は上り坂の先がフラットで、クリッピングポイントが見えないブラインドコーナー。ターン4から先は高速コーナーが連続するうえ、エスケープゾーンはグラベルで、僅かなミスでもマシンを壊してしまう。ターン9は7速で抜ける。近代的な設備に囲まれていても、古き良き時代のチャレンジを多く保持したコースなのだ。
空力ダウンフォースを取り戻した2017年マシンの限界を探るため、フリー走行では多くのドライバーがコースオフを経験した。そのなかで一度も破綻することなく、着実に一歩ずつ前進してきたボッタスは、自らの言葉どおり「自信を築く」作業に集中していたのだろう。ここはウイリアムズ時代から得意としたコース。高いレベルから出発して、予選でもライバルを抑えることに成功した。
そしてポールポジションから「キャリアベストのスタート」。
レース後も論争を呼んだこのスタートに関して、ボッタス自身は「5つのランプが点灯してから消えるまでの時間に大きなバリエーションはない」ため「リアクションと推測の間でギャンブルをする」と、消灯を目視してからの純粋なリアクションでなかったことを半ば認めている。
セバスチャン・ベッテルと同様に、ボッタスのスタートに疑問を抱いたダニエル・リカルドの説明は明快だ。
「5つのランプは、普段より長く点灯していたと思う。グリッド上にいると、エンジン回転を上げて、待って、待って……という状態だ。彼が発進したと同時にランプが消えたのはラッキーだったね。僕もF3時代に一度やったことがあるけど、本当にギリギリだった。自分がリアクションして、同じタイミングでランプが消えるというのは、理論上、ナチュラルなリアクションだと言えない」