元F1ドライバーで、86年と87年のル・マン24時間で総合優勝、90年DTMチャンピオンを獲得、3度ニュルブルクリンク24時間レースを制するなど数々のレースで幾多の優勝を遂げたベテランドイツ人ドライバー、ハンス・ヨアキム・シュトゥックが、38年間のレーシングドライバー生活、そして23年にわたるBMWワークスドライバー生活に終止符を打つことを発表した。
これは先日ミュンヘンで開催されたBMWモータースポーツパーティーで本人から発表されたもので、今後はVWグループ(アウディ、セアト、シュコダを含む)のモータースポーツ代表に就任し、DTM、ダカールラリー、WTCCなどのアドバイザーとしてピットウォールから第二のキャリアを歩むそうだ。
「BMWには言葉を尽くせないくらい感謝をしています。そしてBMWモータースポーツのますますの活躍と成功を祈ります。特にF1では出来るだけ多くの勝利を挙げられますように!これからは、コース上から少し間を置いたピットウォールの裏側から今までの経験を生かしたいと思います。私の経験とこれからの企画案は1冊の本にまとめ切れないくらいたくさんあるのですよ」とシュトゥック。
アドバイザーとしての初仕事は、08年から正式に開催されるフォーミュラADAC(VWエンジン搭載)のレギュレーション作成監修作業と運営企画で、ドイツモータースポーツ協会会長でADAC-Sport会長でもあるヘルマン・トムチュク(DTMドライバー、マルティンの父)と結束し後進の育成に力を注ぐ。
VWアウディグループがF1復帰を願って、シュトゥックをモータースポーツ代表に就任させたのではないかという噂があるが、これについてシュトゥックは「現段階ではそれは全くありえない」と断言している。今後のモータースポーツ参戦に関しては「アドバイスをする上で実験的にハンドルを握ることは出て来る可能性はあるが、自分自身がレースに出ることは私の目的ではない」と答えているが、「09年に“スリーシュトゥック”として、2人の息子ヨハネスとフェルディナントの3人でニュル24時間レースへの参戦を考えていたし、それは08年に実行されるかもしれない」と語り家族でのレース参戦を考えているようだ。
ヨアキムはレーシングドライバーであるハンス・シュトックの息子として51年1月1日に生まれた。父の手ほどきで14歳のときにニュルを初走行。18歳でレースデビューし、70年ニュル24時間で優勝。ツーリングカーレース、スポーツカーレース、フォーミュラと車両を選ばず、雨のレースに強く“レインマイスター”とも呼ばれた。
今年は十勝24時間レースに息子のヨハネスと共にPETRONAS SYNTIUM BMW Z4 M COUPEをドライブ、56歳とは思えない速さを見せた。またドライバー以外では、ドイツでのF1中継のコメンテーターを務め新聞のコラムも書いている。その風貌からは信じがたいようなひょうきんな表情を見せ、特にドイツでは絶大な人気を誇っている。
(Midori Ikenouchi)