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【フェラーリ凋落を問う(3)】アリソンの後釜は誰に? フェラーリTDに求められる政治力

2016年8月14日

 大きな期待と新しいデザイン哲学をもって、2016年シーズンをスタートさせたフェラーリ。しかし、今はレッドブルにも破れ、昨年を下回る低迷期に入ってしまった。今年のフェラーリの何がいけなかったのか。そしてテクニカルディレクター、ジェームス・アリソンの後任にふさわしい人物は、いったい誰なのか──。


 フェラーリの今季型マシン、SF16-Hにはあらゆる面での改善が必要だが、前テクニカルディレクターのジェームス・アリソンがチームと袂を分かち、チーム代表のマウリツィオ・アリバベーネと技術代表に昇進したマッティア・ビノットが技術部門を率いるようになることで、改善の勢いは衰えてしまった。


 フェラーリのパワーユニット部門の前代表で、チームの技術陣から厚い信頼を得ているビノットが暫定的なテクニカルディレクターの候補になったのはもっともな人事ではあるが、フェラーリは今後アリソンの代わりとなるような、特に強い求心力のある人物を求めることになるはずだ。


 F1の世界は、テクニカルディレクター級のエンジニアで溢れている。たいていのチームは3人ほどのディレクター職を全うできるレベルの人材を保有しており、同じくらいの数のチーフデザイナーとなりうる人材を持っている。


 しかし、大多数のチームとは違い、フェラーリのテクニカルディレクターの役割はそうシンプルなものではない。フェラーリのテクニカルディレクターは、ひょっとしたら他のどんな組織よりもずっと政治力が求められる。自らの部門を率い、トップレベルのマネジメントを行い、そして関連するすべての事柄の優先順位や定められた予算のやりくりをしなくてはいけない。


 この役職には実現性の高い計画能力と強い支配力、それにある程度の外交能力が必要だ。しばしばフェラーリのテクニカルディレクター職はスクーデリアのエンジニアリング部門を率いることに対する、内外からの重圧に耐えきれなくなった人の脱出装置だった。


 暫定的にそのような人材がいないということは、今シーズンの残りの焦点と来シーズンの計画が2014年のような紛争の対象になるということを意味している。


 この喫緊の事態は、フェラーリが近い将来に再び覇権を取り戻すという望みを危険に晒すものである。当然のことながら、フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネは今シーズンの勝利を望んでいるため、来期のマシンの開発は今期型の開発と並行して行われることになる。


 さて、いったい誰にこんな役職が務まるのか。そして誰がこの役職をしたいと思うのだろうか。


 F1には数多くの才能を持った人々がいるが、フェラーリのテクニカルディレクターという重責が務まるような人間はほとんどいない。


 ロス・ブラウンは評判のよい選択肢であるが、彼は既に引退しており、またその隠居生活を非常に楽しんでいる。そのため、かつてのフェラーリの技術代表は再びその職を務めそうにない。多くのエンジニアにとって、跳ね馬の重要なポジションに就く機会を断ることはしないだろうし、ブラウンのかつての同僚ロリー・バーンもそんなオファーを無視しなかった。しかし、たとえブラウンがフェラーリの顧問になったところで、現場の最高技術責任者は不在なのだ。


 その他、興味深い選択肢があるといえば、それはレッドブルのエイドリアン・ニューウェイのヘッドハンティングであろう。しかしニューウェイは既にF1の第一線からは退いて、興味が赴く他のカテゴリーにご執心だ。かつてニューウェイはフェラーリに接近したことがあったが、今となっては彼がフェラーリとフルタイムの契約を結ぶことはなさそうだ。


 これは、フェラーリが求める人材の選択肢を広げなくてはいけないことを意味している。メルセデスのエグゼクティブディレクターであるパディ・ロウは現在の居場所で成功を収めており、たいそう幸せそうである。この状況で、フェラーリへの興味がメルセデスへの興味に勝るであろうか。


 メルセデスのトップであるロウでなくとも、彼の先輩たちはどうだろうか。アルド・コスタとジェフ・ウィリスはどちらもよい選択肢だと言える。コスタはかつてフェラーリの技術部門を率いており、2011年にパット・フライが加入してきたことでチームを離れた。コスタの度重なるフェラーリ批判はイタリアのチームに加入するに当たって不利に働くかもしれないが、裏を返せば彼は問題を選別するのにうってつけの存在である。


 一方、ウィリスはダークホースである。BARホンダでの躍進の後、レッドブルに移籍した彼はニューウェイの下でエンジニアリング部門の再編を行った。そして、同じような役職をブラックリーにあるメルセデスのファクトリーでも行った。実績のある能力を持ち、流暢なイタリア語を話す彼は、私には適材であると思われる。


 メルセデスでウィリスと似たような役職を務めた後、ルノーに再び戻ったボブ・ベルもまた理想的な候補である。また、メディアに度々取りざたされているトロロッソのジェームス・キーも候補の一人だ。彼が素晴らしい仕事をしており、また現在はファエンツァにあるファクトリーでイタリア流の職務経験を積んでいる。しかし、キーはフェラーリでトップの役職を務めることでメディアの関心を引くことを好くような人物ではない。


 彼は寡黙で有能なマネージャーであるが、マラネロに息づく、『目的のためには手段を選ばない』ような政治スタイルは彼にはそぐわない。 しかし、ウィリスかベルのどちらかを表看板として据えるのであれば、キーを据えた方がフェラーリにとって有益であるように思える。


 今までに挙げた人物を雇用するにしろ、他カテゴリーから技術スタッフを雇用するにしろ、ガーデニング休暇などを使って現在の契約を全うさせる必要がある。これは2017年の開幕戦前にフェラーリのテクニカルディレクターが定まりそうになく、少なくとも6か月は待たなくてはならないということを意味している。


 つまり、2016年は失敗のシーズンとなり、2017年もまた失敗のシーズンとなることが考えられる。新しいテクニカルディレクターがその能力を発揮し始めるのは早くても2018年からであり、オペレーションはその後数年かけて改善していく。


 結果としてフェラーリは今後2〜3シーズンはベストを引き出すことが難しく、これまでずっと続いているパフォーマンスの不足、期待以下の成績という状況をさらに長引かせることになりそうだ。



(Translation:AUTOSPORTweb)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています


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