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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム開幕直前編】組織づくりは道半ばも体制を強化。接戦の中団で上位復帰を狙う

2020年3月11日

 2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。今年は成績の振るわなかった2019年シーズンの反省を活かして、何としても中団勢の上位争いに戻りたいところ。いよいよ目前に迫った開幕を前に、テストの手応えやチームの現状などを小松エンジニアがお届けします。


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2020年F1プレシーズンテスト(2/19〜21、2/26〜28)
#8 ロマン・グロージャン ベストタイム:1分17秒037(6日間総合13番手/C4タイヤ)
#20 ケビン・マグヌッセン ベストタイム:1分17秒495(6日間総合19番手/C4タイヤ)


 2020年シーズンも、こちらのコラムをよろしくお願いします。今年は現行レギュレーションでの最終年、昨年にも増して激しい中団争いになると思うので、さらに面白いレースが増えると良いですね。もちろん、ハースとしてはその集団の前の方で戦えるように日々取り組んでいます。また大きくレギュレーションが変わる2021年仕様のクルマも並行して開発していかなければいけないので、凄い年になりそうです。


 加えて、現在はコロナウイルスがヨーロッパ(特にイタリア)でも猛威をふるっており、中国GPが延期になったり、バーレーンGPも観客無しでの開催が決まったりと、影響が出ています。日本の状況もかなり大変な様ですが、なんとかF1として良いレースをして皆さんに少しでも明るい話題を届けられればと思っています。今シーズンもよろしくお願いします!


 さてプレシーズンテストを終えての率直な感想としては、「相変わらず中団勢は拮抗しているな……」という感じです。テスト日数も昨年の8日間から6日間に減り、やることが多く大変でしたが、結果としてはとても実りのある6日間にすることが出来たと思います。


 2019年のクルマは予選である程度速くても決勝レースではタイヤがもたないということが大きな問題だったので、その反省点が2020年のクルマの設計や空力面に活かされています。とはいえ見た目がガラッと変わったわけではないので、外からはわかりづらいかもしれませんね。


 それでも、フロントウイングが変わったのはすぐに目につくと思います。昨年のコンセプトは行き詰まっていたので、かなり早い段階でコンセプトの方向転換は決めていました。その他もバージボード、冷却のレイアウト、フロアなどすべて見直しました。

2020年F1第1回バルセロナテスト1日目:ケビン・マグヌッセン(ハース)
2020年F1第1回バルセロナテスト1日目:ケビン・マグヌッセン(ハース)


 テスト前の1月・2月にはシミュレーターで走り込んでかなりのデータを採りました。そして実際に走り出してみると、クルマの感触はシミュレーターで作業していた時の想像通りものだったので、先ずは良い出だったと思います。ハースは何十年も活動しているチームではないので、シミュレーターも既に証明されたものがあるわけではく、ダラーラと共同で開発を行っているのです。これを比較的短い期間で新車準備に使えるレベルまでもってこれたことは大きな収穫です。


 シミュレーターというのは、下手をすると凄くお金をかけてもテレビゲームの域を出ないことがあります。ですからウチのようなチームがやる場合には特に気を付けないといけないのですが、今のところ順調に進歩してきています。この開発はこれからも実走と並行してどんどん進めていきます。


 バルセロナテストでは、基本的にはデータ収集に力を入れました。とにかく去年の反省からプログラムを見直して、昨シーズン中にわかったことを今年はシーズン前に理解するため、『VF-20』を丸裸にするようなテスト計画を組みました。


 もちろん、冬ですので路面温度は低いのですが、それでも1日平均10セットの新品タイヤを使って走り、クルマの特性と感度を良いレベルで把握することが出来ました。レース週末中はタイヤの数や走行時間にかなり限りがあるので、なかなかこの様なテストをすることはできないので、この段階でのデータ収集が後々とても重要になってくるのです。

ロマン・グロージャン(ハースF1チーム)
ロマン・グロージャン(ハースF1チーム)


 また新型コロナウイルスの影響も2回目のテストから出始めました。フェラーリは予定どおり全員バルセロナに来ましたけど、ダラーラやブレンボはバルセロナ行きを取りやめました。とは言っても、同じダラーラのオフィスで仕事をしているハースの社員は来ました。ダラーラで設計に関わっているメンバーはなかなか実走の現場に来る機会がないので、バルセロナに来れなかったのは残念でした。


 またテストに来て空力解析をやっているイギリス人のなかにはイタリア在住のスタッフもいるのですが、彼らはテスト後はイタリアに戻らず、イギリスに来てバンベリーの事務所で働いています。実際、その後イタリアでは更に規制がかけられる地域が増えて来ています。

■組織作りに欠かせない『意識改革』

 チーム内の状況ですが、昨年の途中から組織などもずいぶんと変えてきているので、徐々にあるべき形になりつつあります。あとはスタッフたちの意識改革です。問題解決や開発部品の評価のプロセスがちゃんと出来ていなかったというのも反省点ですが、結局のところ最後は人です。実際にやっている人たちがきちんとした問題意識を持ってやっていないと、どんなに良い形やプロセスを作っても、意識のない人のところでダメになってしまいます。小さいチームとはいえ200人以上いるので、やり方を変えながら意思統一をするのも簡単ではありません。


 チームが上手く動いていく為には、高いレベルで意識を持っている人達を要所に配置していかなければいけません。昨年の今の時期と比べるとかなりよくなっているし、今の組織は去年の中盤にはなかったもですが、これからも常に進化していかなければなりません。どこかひとつをよくしても、他で限界が見えてきたらそれに対処しなければならないので終わりのない作業です。

ロマン・グロージャン&小松礼雄(エンジニアリングディレクター)
ロマン・グロージャン&小松礼雄(エンジニアリングディレクター)


 あとはチーム内のコミュニケーションですね。チーフレースエンジニアとしてトラックサイドだけを見ていた時は、みんな常に現場で顔を突き合わせているので比較的簡単に意思統一ができました。トラックサイドとビークルパフォーマンスグループというファクトリーで性能を見てくれる人たちとの共同作業も上手く行きました。


 でもチームとしてよくなるためには、同じことをチーム全体でやらないといけない。そこには設計、空力、プランニングや購買部の人たちも関わってきます。ウチの場合はこのうち半数以上がイタリアにいるので、コミュニケーションはなお更のこと大変です。


 バルセロナテストへ行く前にもイタリアに行きましたし、本当は第3戦ベトナムGP後にもイタリアに行く予定だったのですが、今はコロナウイルスの影響があり取りやめざるを得ませんでした。このイギリス・イタリア間のコミュニケーションの改善は、チームが前進する為には絶対的な必要条件だと思っています。


 このように状況は改善されているものの、まだチームが本来あるべき形にできあがっているわけではありません。今はとにかくこれまで学んだことを活かして、効率よくチームを動かそうとしているところです。無駄なところには時間も金も人も使えないので、何が優先でどこに労力をつぎ込むのかを見極めて、わかりやすくいえば『当たり前のことを当たり前にできる組織づくり』をしていくことが2020年シーズンの目標です。


 チームの成績としての目標は、やはり中団勢のなかでも上位で戦うということです。昨年みたいに予選一発は速いけどレースで戦えないというのではどうしようもないので、予選とレースを通して中団の前の方で戦いたいと思っています。


 冒頭でも書きましたが、中団は今年もとても拮抗していると思います。サーキットの特性や路面温度など、いろいろなことが要因となって毎戦状況が変ってくる可能性があります。ウチの課題はアップダウンが激しいところにあるので、もっと安定して競争力をもって戦えるようになることが目標です。

2020年第2回F1プレシーズンテスト最終日 ケビン・マグヌッセン(ハース)
2020年第2回F1プレシーズンテスト最終日 ケビン・マグヌッセン(ハース)



(Ayao Komatsu)




レース

4/19(金) フリー走行 結果 / レポート
スプリント予選 結果 / レポート
4/20(土) スプリント 12:00〜13:00
予選 16:00〜
4/21(日) 決勝 16:00〜


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5位ランド・ノリス37
6位オスカー・ピアストリ32
7位ジョージ・ラッセル24
8位フェルナンド・アロンソ24
9位ルイス・ハミルトン10
10位ランス・ストロール9

チームランキング

※日本GP終了時点
1位オラクル・レッドブル・レーシング141
2位スクーデリア・フェラーリ120
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム69
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム34
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム33
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
7位マネーグラム・ハースF1チーム4
8位ウイリアムズ・レーシング0
9位ステークF1チーム・キック・ザウバー0
10位BWTアルピーヌF1チーム0

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