再スタート時のコントロールライン通過順は3番手ストロール、4番手ヒュルケンベルグ、5番手マッサ、6番手リカルド。4台の間隔は0.18秒で、ほとんど4ワイドの状態だった。そこから思いきり良くイン側に進路を取り、ターン1に向かって最もブレーキを遅らせて前に出たのはリカルドで、コーナー出口では完全にレコードラインを支配していた。
レースを振り返れば「あれが勝利の決め手になったアタックだったと思う」とリカルドは言う。赤旗中断によって全員がスーパーソフトに交換していたが、リカルドはレッドブルのマシンと合わせた際のそのブレーキング性能を誰よりも知っていた。他のマシンの事故の様子から、ターン1で勝負を決めないとターン2にはリスクが伴うことも熟知していた。
そして“パワーで負けている”と言われるルノーのパワーユニットでも、バクー仕様のレッドブル=ダウンフォースを削った仕様は、他と比肩し得る以上のストレート速度を備えていた。予選では苦労しても、レースのためのセットアップが役に立った。
ストロール3位初表彰台を生んだウイリアムズの指導力
キャリア5勝目を飾ったリカルドと、周回遅れから2位まで挽回したバルテリ・ボッタス。そしてもちろん、バクーの表彰台で最もフレッシュだったのは18歳のルーキー、ランス・ストロールだ。
トリッキーな市街地コースで、金曜日からチーフテクニカルオフィサーのパディ・ロウが絶賛したほど、ストロールは慎重にコースを学び、一度もコースアウトすることなく、クリーンな週末を戦った。
シーズン序盤、クラッシュを繰り返す粗削りな18歳は、様々な批判を浴びた。F3からF1へのステップはあまりに大きく、ドライバーは明らかに経験不足で、F1マシンの操縦そのものにも慣れていなかった。素晴らしいのは、そこで若さゆえの負のスパイラルに入らなかったドライバー自身と、彼の能力を効果的に引き出したチームの力だ。
間違いなく、カナダGPでの9位入賞は大きなきっかけになった。ドライバーが地元グランプリの高揚に呑まれてしまわないため、ウイリアムズが採用したのは、モントリオールの金曜日に“一度もウルトラソフトを使わせない”という厳しい作戦だった。