ポールポジションからスタートしたボッタスは、リヤタイヤにオーバーヒートの問題を抱えていてペースが上がらない。スタート前のグリッド上でジェネレーターが故障した結果、正しい内圧設定ができていなかったためだ。ピレリが指定する内圧はもともと高めだが、それよりさらに1PSIも高い内圧でスタートしたのだから、ボッタスにはどうすることもできなかった。
そのボッタスとハミルトンの間にフェラーリが割って入ったため、メルセデスチームにもなす術がなかった。スタート直後にハミルトンをかわしたことが、ここでもフェラーリに大きな意味をもたらした。
ボッタスをアンダーカットするため、ベッテルがピットに入ったのは10周終了時点。予想よりずっと早いフェラーリ動きにメルセデスは反応できず、ハミルトンはすぐにボッタスに追いついたものの、2台そろって1分37秒台で走り続けることになってしまった。
一方、第2スティントでも迷わずスーパーソフトを選んだベッテルは、第1スティントより3秒速いペースで走り始めた。この時点で、フェラーリはアンダーカットに成功していたと言っていい。
ところがその直後、ランス・ストロールとカルロス・サインツJr.の接触事故によってセーフティカーが出動。フェラーリの作戦に水を差したようにも映ったが、2台を同時にピットインさせたメルセデスでは、タイヤガンが正常に動かないという大問題が発生していた。結果、ボッタスの静止時間は6.2秒、ハミルトンの静止時間は6.4秒。コースに戻るメルセデス2台の前を、ベッテルのフェラーリが通過していった──。
さらに悪いことに、同時ピットインのためボッタスとの間隔を取ろうとしたハミルトンは、3番手ダニエル・リカルドを抑えて“ピット入り口で不要にペースを落とした”として5秒ペナルティを科せられてしまう。速度制限のラインの手前で57km/hまで減速し、その後75km/hまで加速したというのだから、ペナルティは当然。ハミルトンも自分のミスだと認めた。
スタート前のジェネレーターの故障、タイヤガンの不調、ハミルトンのペナルティ。メルセデスらしくないミスが重なった背景に、バーレーンの暑さと、フェラーリから受けるプレッシャーがあったことは想像に難くない。
圧倒的な強さで戦ってきた3年間、彼らが経験したことのない状況なのだ。予選でフロントロウを獲ってもレースではタイヤのオーバーヒートに悩んでペースを落としてしまう症状は、パワーユニット導入前のメルセデスの、苦難の時代を思い出させるものでもある。
タイヤ内圧の問題から解放されたボッタスは、セーフティカー明けの18周目、ウォームアップの良さを活かして首位ベッテルに挑戦。ターン4でフェラーリの隣に並んだが、主導権を握ることはできなかった。