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今宮純:ドライバーズ・レースの緊張感、悪夢がフラッシュバックしたチャンピオン

2016年3月21日

 F1スポーツは残酷だ。それを昨年最終盤にニコ・ロズベルグは深く自覚したのだろう。ハミルトンに1コーナー・バトルで叩かれ、タイトル争いに敗れた。そのあと3連勝したが、すでに戴冠した王者は真剣モードではなかった。

 やり返すのは、この開幕戦だ。しかし金曜FP1からハミルトンはトップタイムを続け、FP2で焦る気持ちから不用意にスピン・アウト。ロズベルグは、すべてのセッションで劣り、なんとか予選で2位につけたが心は曇る……。

 やっと青空が広がった日曜。開幕日和となったところでスタート・キャンセルのハプニング。ダニール・クビアトがグリッド手前まで来てトラブルで止まり、2年前のようなエクストラ・フォーメーションラップ、57周レースとなる。あのときもハミルトンはポールポジションから、スタートに失敗している(結果はパワーユニットのトラブルで2周リタイア)。勝ったのはロズベルグだ。これを見た、ふたりの深層心理はどうか。絶対有利なはずのハミルトンは動揺し、不利なロズベルグに千載一遇の機会が生まれるという考えが浮かんだ。

 果たしてハミルトンは、ホイールスピン。踏みすぎたアクセルペダルとクラッチミートに焦りがあったのか。まったく加速せずに2列目セバスチャン・ベッテルとキミ・ライコネンに抜かれた。すかさずロズベルグは1コーナーで「やり返し」にいった。「ここは俺がもらったコーナー」とばかりアウトラインに寄せてハミルトンを貶める。露骨な寄せではない見切り、これが勝因につながっていく。

 視点を、スタートで1-2を決めたベッテルとライコネンに移そう。フェラーリ・チームはパワーユニットの単一マッピング規制に合わせたスタート練習にテストから励んでいた。そろってダッシュ成功は、そうとしか思えない。メルセデスに挑戦する年、彼らはスタート性能の向上と軟らかいタイヤ・スペックの活用にこだわり、予選よりも決勝に焦点を絞ったテストを重ねていた。その戦法が炸裂した開幕戦、1コーナーを真っ赤に染めた1-2に世界中が興奮する。

 1周目ベッテル1位、ハミルトン6位。ガードマンのように2位ライコネンがいて、3位ロズベルグを抑える。前衛がリードして後衛が抑えこむ1-2は、理想のパターン。まずフェラーリはベッテルを13周目にピットに入れ、再びスーパーソフト選択で攻撃。ライコネンはステイさせて敵2台を翻弄する戦法に出た。こういうミッションを黙々と遂行できるライコネンは16周目まで粘ってピットイン。ここでロズベルグが2位に割り込んで1-3に変わるが、スーパーソフトのライコネンはミディアムのロズベルグを追い込めるはず、だった。

 開幕戦では意外な事態が起きる。17周目、3コーナーでフェルナンド・アロンソとエステバン・グティエレスが絡み、重大事故が発生。犠牲者が出ずに済んだのはFIA新安全規定とタイヤバリアなどコース管理の賜物だ。セーフティカー導入では済まない大事故によって赤旗中断、ここで全車ピットレーンに止まり、無線制限ルールの影響なく、自由に戦略を変更できることになる。メルセデス勢は救われた。後半のロングスティントを、硬いミディアムのままノンストップでカバーする判断を下す。フェラーリは違った。スーパーソフトで飛ばして最後はソフトへ。わかりやすい異なる戦略だ。

 再開後の22周目、ライコネンのマシンから出火トラブルがあり、包囲網は破けた。1対2と苦境に立たされた首位ベッテルは35周目にピットへ。ここで左フロントを外すのに約「3秒」タイムロスして5秒6かかった。これが最終盤のハミルトン追走に響く。もっと早く背後に迫って、プレッシャーをかけられたのに……。51周目、2番手ハミルトンが9コーナーでコースオフ。両者の攻防戦は続き、55周目に3番手ベッテルも15コーナーでオーバーラン。激しいサイド・バイ・サイドではないが、ドライバーズ・レースのせめぎあいが続く攻防。だからこそ、お互い表彰台で讃えあった。

 1位ロズベルグから9.643秒差で、ベッテルは敗れた。直近ライバルのハミルトンとは1.583秒差。赤旗中断後も攻める姿勢で立ち向かっていったフェラーリ、ベッテルの負けっぷりは潔い。最強王者だったメルセデスも防衛を強化することになるだろう。F1のスポーツ性を具現化する2016年が始まった。

(Text : Jun Imamiya)




レース

5/4(土) フリー走行 1:30〜2:30
スプリント予選 5:30〜6:14
5/5(日) スプリント 1:00〜02:00
予選 5:00〜
5/6(月) 決勝 5:00〜


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8位フェルナンド・アロンソ31
9位ルイス・ハミルトン19
10位ランス・ストロール9

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4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム52
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム40
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
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