ヨーロッパGPは、もしキミ・ライコネンがいなければミハエル・シューマッハーにとってもっと厳しい戦いになっていたはず、だという声を、フェラーリ監督のジャン・トッドが一蹴した。
スタート後に2番手につけたライコネンの背後でライバルたちが列をなしている間に、シューマッハーはわずか7ラップで17秒の差を築くことができた。
トッドはこう認める。「確かにおかげで助けにはなったが、ミハエルは本当に速かったし、最初のピットストップの後にあれだけ大きな差になるとは我々でさえ思ってもいなかった」
「給油を終えたミハエルは、先頭集団のすぐ後ろでコースに復帰できた。だが、(ライコネンのおかげというよりも)車がよかったし、タイヤがよかったし、ミハエルもスタートからとてもいいドライブをして、結果的にいいレースができた。だが成功という言葉は慎重に使わなければならない。それはとてもはかないものだからね。私は勝って当たり前だとは決して思わないように自分を戒めているし、実際、勝って当たり前なんてことはありえないんだ」
トッドはまた、先週死去したフィアット会長のウンベルト・アニエリとチームとの特別な関係について語った。今回のレースの優勝はアニエリに捧げられている。トッドは亡くなった彼のことを「偉大なボス。大きな人物ですばらしい紳士が、突然亡くなってしまった。彼は常にチームの心強いサポーターだったから、だからこそこの勝利をどうしても彼に捧げたかった」という。
レースのスタートの時点で、チームはまだ未知な要素を抱えていたというトッド。金曜にメカニカルトラブルがあったためチームは2種類のタイヤの双方を試せず、タイヤに関する情報量が足りなかったのだ。そのためチームは、ミハエルにとルーベンス・バリチェロで別々の戦略をとることにしたという。
「レースの間にタイヤがどんな挙動を見せるのか予想がつかなかった。なので戦略を分ける方がいいだろうということになった。ルーベンスはモンテカルロで完璧なレースができなかったので、今回もフロントロウにはつけなかったとはいえ、より自信を得られるよう、彼にも好成績を得るチャンスがあることを分からせる必要があった」
トッドは、ミハエルに続く2位となったバリチェロがトラブルを抱えていたことを明かし、シューマッハーと同等の結果が出せないことを擁護する。
「彼はかなり速いドライバーだと思っている」とトッド。「ミハエルより速くなるのはただでさえ難しいのに、今のミハエルは好調の波に乗っている。車にもタイヤにも満足できている状況で、だからトップのポジションにつけられている。なのでそうした中では、誰であってもミハエルより速くなることはとても難しいと思う。ルーベンスには十分な力がある」
これから向かう北米大陸の連戦に、ライバル勢に十分なリードを築いた状態で臨めるため、気分的に楽なのでは、との問いに、トッドはこう指摘する。「何が起こるか誰にも分からない。11レースといったらまだまだ長い道のりだ。言ってみれば、いつも言うことだが、他チームのポジションと自分たちのポジションを比べても仕方がない。できれば車、空力、タイヤ、エンジンの新規開発まで、シーズン中も我々は改善を続けていく」