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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第14回】ドライバー離脱に感じた責任。チーム再建には新たな取り組みが必要に

2020年10月30日

 2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。第12戦ポルトガルGPの開催直前には、ロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセンが今シーズンを最後にチームを去ることが発表された。4シーズンを戦ってきたふたりの離脱に、小松エンジニアは何を思うのか。そして初開催のアルガルベではタイヤ、風、トラックリミットと様々な要素が影響したなかで、ハースはどう戦ったのだろうか。小松エンジニアが現場の事情をお届けします。


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2020年F1第12戦ポルトガルGP


#8 ロマン・グロージャン 予選18番手/決勝17位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選19番手/決勝16位


 ポルトガルGP開催直前に、ロマンとケビンが今年限りでチームを離れることが発表されました。ロマンとはチーム設立初年度から、そしてケビンは2年目からずっと一緒にやってきたので、思うところはいろいろとあります。


 2016年から2018年にかけて、ほぼ順調にチームは成績を上げてきましたが、2019年シーズン途中の開発で方向を誤ってしまいレースでタイヤを上手く使えなくなってしまいました。これが今年の開発にも大きく影響し、予算面でも厳しくなりました。


 それに加えて新型コロナウイルスのパンデミックでさらに財政面が厳しくなって、今年のクルマはシーズン中のアップデートもキャンセルしなければいけなくなり、人材の流失もありました。これらはすべてクルマの性能、レース結果に直接影響し、12レースを終えた現時点で3ポイントしか獲れていません。


 ここからチームを建て直していかなければならないのですが、そのためには今までとは違ったアプローチが必要です。まずは資金を確保して人を雇わないといけないし、今までストップしていた開発のプログラムも再開させなければいけません。ここに投資しない限り、速いクルマは作れないのです。


 もちろんお金があるからといって成功するとは限りません。しかし逆に、ある程度の資金は絶対条件で、それがない限りはまったく勝負にならない。ですからロマンとケビンとは契約を更新することができなかったんです。


 これには、個人的に非常に責任を感じています。もし去年、開発を誤らずに2018年に続いて良い結果を出せていれば、彼らのドライバーとしての評価ももっと上がっていたかもしれません。少なくとも今年のチームの資金状況は、天と地の差でした。


 もちろん彼らもドライバーとしていろいろミスも犯しましたが、チームもミスを犯したわけです。それが結果的に彼らのF1ドライバーとしてのキャリアを終わらせることに繋がってしまい責任を感じています。


 ギュンター(・シュタイナー/チーム代表)がふたりに決定を伝えた後に、彼らと話しました。このような状況にも関わらず、本音で良い話しができました。彼らが来年どのカテゴリーに乗るかはわかりませんが、ぜひ勝てる可能性のある体制でレースをしてくれたら嬉しいです。


 来年のドライバーについてはいろいろと噂が流れていますが、現時点で僕がここに書けることはありません。近いうちに発表の予定です。

ロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセン(ハース)
ロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセン(ハース)

■レイアウトがおもしろいアルガルベ。予選ではトラブルにより戦略変更

 アルガルベでは初のF1開催となりましたが、サーキットとしてはおもしろかったです。アップダウンが激しく、回り込んでいく7、8コーナーや、登り切ったところにあるブラインドの10、11コーナーなど他のサーキットとは一味違ったコーナーがあってレイアウト的にはおもしろいです。


 ただし、以前にも書きましたがやはりトラックリミットは個人的にはあまり好きではありません。1コーナーや4コーナーの出口など、もしそこを走らせたくないのであれば、縁石を超えたところに、走ったらタイムロスになるような人工芝を設置するなど他にやり方があると思います。


 路面は再舗装されており最初はとてもグリップが低かったです。今回はピレリが最も硬いレンジのタイヤ(C1、C2、C3)を選んでいたので、このミューの低い路面でタイヤをグリップさせるのがなかなか大変でした。とはいえ予選ではミディアムとソフトがほぼ同じ速さだったので、違う作戦を採るチームがあるなどの変化があってよかったです。


 比較的タイヤが硬かったので温まりが悪く、1発のタイムはなかなか出しづらかったです。よって予選では、なるべく多くの周回を走ることにしました。とは言っても連続走行はできないので(タイヤを冷ましたり、バッテリーを充電するため)、プッシュ・チャージ・プッシュというような走り方になります。


 Q1でタイヤを2セット使う場合は、まず5周走ってからガレージに戻って燃料を入れてタイヤ交換をして、それからまた3周走れるだけの時間がギリギリあります。しかし予選前にケビン用の燃料ロボットが壊れてしまったので、予選では1台の燃料ロボットで2台のクルマを賄うことに。そうするとどうしても作業に遅れが出るので、ケビンは3周×2のプランに変更しました。特に彼のようなドライバーは周回数が必要なので、このトラブルは痛かったです。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2020年F1第12戦ポルトガルGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

■「もう1段階タイヤが柔らかければ、もっとおもしろくなったかも」

 上述のとおり今回はピレリが特に硬めのタイヤを持ち込んできたので、レースではハードタイヤを使えるかどうかというのがひとつ疑問でした。FP1で走ったところ、ハードはグリップが出るのに少々周回を要するものの、いったんグリップが出ればそれほど悪くないタイヤで、逆にソフトはあまり良いところがないことがわかりました。


 うちは後方からのスタートなので、最初からソフトタイヤでスタートする選択肢を除外して、ロマンは最も妥当なミディアム-ハードの1ストップ。レース中に何かが起こった場合に2台のクルマのどちらかが対処出来るようにするために、ケビンはタイヤの順番を逆にしたハード-ミディアムの1ストップを選びました。


 実際には雨も降らず、セーフティーカーや赤旗も出なかったので、残念ながら戦略の違いを活かして前に出ることはできませんでした。ほぼ全ドライバーが1ストップで走りきれるレースの場合は、予選順位をレースで大きく挽回するのは難しいのです。タイヤが硬かったのでレースは基本的に1ストップでしたが、もう1段階柔らかいタイヤを持ち込んでいたらもっとおもしろくなったかもしれないと思います。


 それに加えて日曜日は風が強かったので厳しかったですね。風が強くなることは事前にわかっていましたし、それはどのクルマにとっても同じなので言い訳にはなりませんが、やはり今年のクルマはとにかく影響を受けやすいです。今年は直せないのでなんとかやるしかありません。来年のクルマでこのあたりを改善しなければと思っています。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第12戦ポルトガルGP ロマン・グロージャン(ハース)


 最後に新型コロナウイルスの状況ですが、ヨーロッパでの状況、そしてパドックでの状況は悪くなってきています。ウチもポルトガルGPのレース直後に、土曜日に検査を受けたひとりが陽性となりました。その人はすぐに隔離され、また彼と同じレンタカーに乗っていた人たちも隔離されました。


 彼はもちろんイモラに行けず、現在もポルトガルのホテルで14日間の隔離をしています。ウチは今までひとりも感染者がいなかったのですが、時間の問題と思っていたので「とうとう来たな」という感じです。


 パドッククラブのお客さんは来ていたようですが、パドック自体には入れないので、F1で働いている人たちは一般の方々とは接触しないように分けられています。サーキット内では比較的安全だと思いますが、ロンドンの空港などはあまりしっかりと隔離されていないのである程度のリスクがあると思います。現在、イタリアのボローニャに向かう飛行機のなかでこれを書いていますが、ガラガラです。なんとか安全に残りのシーズンを終えれるよういっそう気を付けていきたいと思います。

ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)
2020年F1第12戦ポルトガルGP ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2020年F1第12戦ポルトガルGP ケビン・マグヌッセン(ハース)



(Ayao Komatsu)




レース

4/19(金) フリー走行 12:30〜13:30
スプリント予選 16:30〜17:14
4/20(土) スプリント 12:00〜13:00
予選 16:00〜
4/21(日) 決勝 16:00〜


ドライバーズランキング

※日本GP終了時点
1位マックス・フェルスタッペン77
2位セルジオ・ペレス64
3位シャルル・ルクレール59
4位カルロス・サインツ55
5位ランド・ノリス37
6位オスカー・ピアストリ32
7位ジョージ・ラッセル24
8位フェルナンド・アロンソ24
9位ルイス・ハミルトン10
10位ランス・ストロール9

チームランキング

※日本GP終了時点
1位オラクル・レッドブル・レーシング141
2位スクーデリア・フェラーリ120
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム69
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム34
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム33
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
7位マネーグラム・ハースF1チーム4
8位ウイリアムズ・レーシング0
9位ステークF1チーム・キック・ザウバー0
10位BWTアルピーヌF1チーム0

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