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小松礼雄コラム 第13回:トラブルの連鎖で乱れるドライバーの心と、走りの難しさ

2016年9月29日

 今年、ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。新チームながら、すでに中位を争うハースの評価は高まるばかり……のはずが、第15戦シンガポールGPでは、トラブルとアクシデントだらけで悲惨な週末に……。F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第13回をお届けします。

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トラブルとアクシデントの連鎖で悲惨な週末に
乱れるドライバーの心と、走りの難しさ

 シンガポールGPが終わったばかりですが、レース直後からとても忙しい毎日になりました。スケジュールを簡単にお伝えすると、シンガポールからイギリスに月曜日の夜に帰ってきて、火曜はイギリスのバンベリーの事務所、水曜日はタイヤ・ワーキング・グループというFIA・他チームとの会議の為にフランスのポール・リカールに日帰り(なぜポールリカールかというと、そこでメルセデスが2017年用のタイヤのウエットテストを行っていたから)、金、土はイタリアのダラーラとフェラーリのファクトリーに行き、そこからイギリスに戻って、これからまた月曜日にマレーシアに行くという予定です。

 7日間の間に5日間も飛行場に行かなきゃいけない(苦笑)という強行日程でした。来年へ向けての作業が加わってきているので、このシーズン後半はさらに忙しくなります。大変ですが、こうやって体制づくりをしていくのはとても面白いです。

 今回のシンガポールGPはロマン(グロージャン)にとっては最悪な週末でした。FP1で走り始めてすぐにエンジン関連の問題が出てしまい、計測ラップが1回もできないまま、エンジン交換のために走行終了となってしまいました。暑い中、メカニックがやっと交換をすまして、FP2に出て行ったと思ったら、今度はクルマのバランスがとても悪かったんです。

 今回はフロントウイング、フロア、リヤドラムなど新しいパーツを入れていたので、いきなりバランスがピタッと合うとは思っていませんでしたが、ここまで悪いというは想定外でした。FP1で走っていたエステバンのデータはまあまあ良かったのですが、そのエステバンもFP2ではバランスの悪さに苦労していました。エステバンはそれでもFP1というレファレンスがあったので、それなりに走っていましたが、FP1で全く走れなかったロマンは焦っていましたね。

 特にシンガポールのようなストリートサーキットでは走行時間が重要です。それで、焦ってバランスの悪いクルマをねじ伏せながら走っていたら、ウルトラソフトで予選練習をしているときに、最終コーナーでオーバーステアを出してコースオフ。リヤウイング、フロア、サスペンションを壊してロングランができないままセッションが終わってしまいました。

 そんなもんだからロマン側のデータが全然取れなくて、金曜の夜のセットアップ変更も上手くいきませんでした。FP3の走り出しでは、FP2からのアンダーステアが改善されず、FP3最後のランでは大きくセットアップを変えざるを得ませんでした。結果的にこの変更は行き過ぎで、とても不安定な運転しづらいクルマになってしまいました。FP3というのは予選前の最終確認のセッションなので、普通は大きくセットアップを変えることはしません。そのセッションでここまでクルマのセットアップができていなかったというのは大きな問題です。

 予選に向けてFP3のデータを元に修正をかけたんですけど、まだクルマは良くなく、ロマンは予選でもすごく苦しんでいました。最初のランでエステバン(グティエレス)に1秒くらい遅れて、そのギャップを見て、やっぱり彼は焦って「もう行くしかない」と思ったんですね。ロマンとしては何としてでも少なくともコンマ2秒くらいに詰めなきゃいけない、と。

 そういうレベルでアタックしているということは、いつクラッシュしてもおかしくない状態なわけです。結局、ロマンはQ2の最後のランのブレーキングでコースオフしてクラッシュしてしまいました。

 ターン10で最初にブレーキを踏んで、最初はリヤがロックするんですけど、普通はその後ブレーキをリリースしてコーナーに入っていくので、そのまま行けるんです。だけど今回の問題は最初に踏んだとき、クルマがロマンが想定したほどちゃんと止まってくれなかった。だからクルマを止めるために、ロマンはブレーキをかなりの高いプレッシャーで踏み続けるわけです。クルマの速度が落ちてダウンフォースが減って、絶対的なグリップが減っていくところで、高いプレッシャーでブレーキを踏み続けたので、もう1回、大きなリヤロックがバーンと起きてしまった。

 ロマンはその2回目のリヤロックでスピンしてしまいました。最初と2回目のロックの時間はブレーキ2つといってもすごく短いので、テレビを見ているとその区別が分からないくらい一瞬の話です。それはブレーキで突っ込みすぎたというより、クルマがそれだけ運転しにくい、エッジにあるというかピーキーな状態だったということです。だから彼はエステバンからコンマ2秒落ちぐらいのタイムを出すのにも、あそこまでリスクを負わなければいけなかったんです。

 ウチにとってさらに残念だったのは、ロマンがエステバンの前を走っていたので、ロマンがクラッシュしてイエローフラッグを出したのでエステバンの最後のアタックラップを止めなければいけなかったことです。エステバンは予選も調子が良くて、最後のアタックはそこまでかなりいいタイムだっただけに残念です。

■焦ってクラッシュしてしまったロマンの状況
■セットアップをチームメイトと完全コピーできない理由
■日本GP鈴鹿に向けてのハースの目標


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