マシンだけでなく、コースまでもがドライバーと一体になったような予選アタックだった。
バルテリ・ボッタスも、このコースは得意だ。15年も16年も、ウイリアムズで3位表彰台を飾ってきた。それでも“ゾーン”に入ったハミルトンを追いかけることはできなかった。
アタックを終えるたび、インラップでは観客スタンドの熱狂が目に入ったとハミルトンはファンに感謝する。ターン1、6、8、10と、ドライバーの進行方向真正面に満員の観客スタンドがそびえ立つジル・ビルヌーブ・サーキットの特徴も、彼の速さに加担しているに違いない。
日曜日、順当にスタートを切ったハミルトンは、そこから一度もトップの座を譲ることなくゴールまで走り切った。脅威となるべきセバスチャン・ベッテルは、スタート直後のターン1でマックス・フェルスタッペンに右フロントウイングを奪われ、緊急ピットインを余儀なくされた。
5番グリッドから好スタートを切ったフェルスタッペンも、ベッテルとボッタスをかわして2番手に浮上した後、11周目にはエナジーストアのトラブルで突然、動力を失った。
追い上げるマシンは1台もなく、順調にリードを広げたハミルトン。1ストップ作戦のピットイン予定は21周目だったが、ウルトラソフトがほとんど性能低下しないことを確認し、タイムを向上しながら32周目までステイアウトした。
その間に、ソフトに交換したマシン、スーパーソフトに交換したマシンのペースを確認したうえで、リスクを冒すことなく、第2スティントにはスーパーソフトを選択した。
一方のボッタスは、18周目にソフトに履き替えたダニエル・リカルドのペースを見て、23周目のピットインでソフトを選択した。しかしリカルドもボッタスも、一見ロジカルに映ったソフトという選択が誤りだったと言う。
「ソフトからグリップを引き出すのは、本当に難しかった」
「金曜日の走行では悪くはなかったから、トライするためにソフトを選択したけれど、期待した速さはなかった。今日のソフトは遅いタイヤだった」
その選択が、首位ハミルトンと2番手ボッタスの間隔を広げ、3番手リカルドの後方にフォース・インディア2台の熾烈なバトルを生んだ。