新人らしからぬ冷静な判断力でF1ファンに強烈な印象を残したオコン
8番手スタートのセルジオ・ペレスは、5周目からレースの終盤まで、リカルドの真後ろを走り続けた。18周目にピットインしたリカルドに反応して19周目にスーパーソフトに交換したものの、前を塞がれて“抜けないパターン”に陥ってしまったのだ。
一方、ハミルトン同様に32周目までステイアウトしたエステバン・オコンは、ピットインするまで2番手を走行してボッタスを抑え、スーパーソフトに交換した後は5番手キミ・ライコネンを追走した。
メルセデスの2台ははるか前方。3番手リカルド、4番手ペレス、5番手ライコネン、6番手オコンは接戦。41周目にライコネンが2度目のピットに入ると、ソフトで苦労するリカルド←抜きあぐねるペレス←13周フレッシュなタイヤで攻めるオコン、という接近戦が繰り広げられることになった。
客観的に見れば「オコンに譲って彼がリカルドを攻略できなければ、ポジションを元に戻すから」というフォース・インディアの指令はとても理に適ったものだ。
後方からは、フェラーリの2台が追い上げてきている。しかしリカルドの真後ろをずっと走ってきたペレスには、レッドブルがどれだけ巧みに要所を抑えてきたかがよく分かっている。オコンがトライしても同じだと思う。だから、周回遅れに追いつくタイミングで攻撃するチャンスを自分に与えてほしいと、チームに訴える。
おそらく、無数の会話が交わされただろう。最終的にチームはオーダーを諦め、ふたりのドライバーが自由に戦うことを許した。
ペレスはチームの要請を拒否し、リカルドを抜くことも叶わず、オコンともどもベッテルに抜かれてしまった。ここは、賛否両論の生まれるところ──。
フォース・インディアのチーム内の作戦は、伝統的に、「チームメイトが迫ってきたら抑えない」「その時点で速いほうのマシンが前に出る」という、とてもシンプルで賢明なものだ。追う立場の中堅チーム、自分たちのなかでは1秒たりともロスしている場合ではないのだ。