「ジル・ビルヌーブ・サーキットは確かにパワーサーキットですが、最後のストレートを除けば、ひとつひとつの直線自体それほど長くない。さらに直線と直線をシケインでつなぐストップ&ゴーなので、いかにシケインを抜けるのかが重要となります。われわれのクルマは、メルボルンも良かったように、そういうコースで悪くない」
もうひとつの理由は、ホンダの見えない改善である。
「いわゆるシーズン前に予定していたアップデートというものは間に合いませんでしたが、小さなモディファイは入っています。パワー面より、ドライバビリティを改善させるアイテムです」
シケインが多いジル・ビルヌーブ・サーキットは、シケインを立ち上がる際にエンジンが低回転となる。ホンダはスペインGP以降、このエリアでのパワーアップを図ってきた。さらにエンジンのセッティングも改良して、以前悩まされていた振動はほぼ解消。このドライバビリティの改善が、あと一歩でアロンソをQ3進出するところまで押し上げた。
Q2の2回目のアタックで、セクター1を自己ベストの20.091で通過したアロンソは、セクター2も自己ベストとなる23.629で通過。しかし、セクター3のヘアピンを立ち上がったところで、コンクリートウォールにヒットしてタイヤをバンクさせたクビアトがスロー走行していた。
わずかに走行ラインを変えたアロンソのタイムは1分13秒693。Q1で記録した自己ベストを更新できず、予選12位に終わった。
予選でのアロンソのセクター3の自己ベストはQ1の1回目の29.741。もし、このタイムでセクター3を走っていれば、1分13秒461が記録されていた。それでもトップ10のヒュルケンベルグに100分の6秒及ばなかったわけだが、カナダGPのマクラーレン・ホンダはコンペティティブな戦いを予選で繰り広げていた。
ピークパワーでの性能向上も大切だが、レースはそれだけがすべてではない。そのことをカナダGPの予選は物語っていた。
(Text : Masahiro Owari)