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【レースの焦点】長い冬を乗り越え、ついに訪れた春の日差し/F1第4戦ロシアGP

2017年5月2日

 タイヤを感じ取る能力が高く、管理が得意なボッタスにとって、屈辱的な経験だったに違いない。もともと、2〜3周後ではなく、10周後のタイヤのコンディションを正確に予測できるドライバーなのだ。

 タイヤのオーバーヒートに悩むメルセデスは、グランプリ直後のバーレーンテストでもこの問題の解決を重要課題とした。テスト2日目を担当したボッタスが、灼熱のバーレーンで重ねたレース距離の2倍以上の周回=143周からは、なんとしても問題を克服するのだという気迫が感じられた。

「上海からの2連戦の後、バーレーンに残ってテストを続けるのは楽なことではなかった。でも、多くのデータを収集し、僕自身、いくつか秘訣を学べたと思う」

 ソチで走り始めてからも、ロングランペースを維持するための研究は続いた。金曜日のフリー走行ではウルトラソフトで誰よりも長い32周を走った。

「優れたバランスは得ることができた。ただ、予選の1アタックに関してはまだ改善が必要だね」

LAT


 大接戦の予選ではフェラーリがフロントロウを独占。ボッタスはわずかに届かず、3番グリッドからスタートすることになった。

 接戦のなかで両チームが苦手分野の克服に努めた結果、予選で速いメルセデス vs レースで速いフェラーリという、これまでの傾向に変化が見られたソチ。みんなの視線がフェラーリに注がれた土曜の午後、ボッタスは「このコースで3番グリッドはそんなに悪い位置じゃない。最初のコーナーまで長いストレートがあるから」と決意を口にした。

 勝つためには、スタートに成功し、フェラーリの真後ろでスリップストリームを利用し、ターン2までに前に出ることが必須だった。ソチのコース形状と1ストップ作戦を考えると、それが最大の鍵。

 最高のスタートを切ったボッタスは、迷うことなくベッテルの真後ろに迫り、ターン2の手前でフェラーリの前に出ることに成功した。わずかに幸運が働いたとしたら、スタートに失敗したライコネンを出足でかわせたこと、向かい風のなかでスリップストリームが期待以上に効いたこと。

LAT


「ミラーでバルテリを確認して“接戦になるぞ”と思った」と、ベッテル。

「でも、すごい勢いでスリップストリームを活かして迫ってきた彼は、ブレーキング以前に先行してしまった。僕にはどうすることもできなかったよ。あそこでレースを失ったと言ってもいい」

 第1スティントはボッタスのペースについて行くことができなかった。アンダーカットが不可能と悟ったベッテルは、ボッタスがピットインした後も7周長くステイアウト。フレッシュなタイヤで第2スティントを攻める作戦を選んだ。現実的に、他に選択肢はなかったのだけれど──。

 しかしスーパーソフトに履き替えたメルセデスは意外とペースが上がらず、5秒近くまで開いていたボッタスとベッテルの間隔はぐんぐん縮まっていった。諦めないベッテルの攻めと、冷静に守るボッタスの攻防は、レース後半の華。

「でも、僕のレースを色々話すより、バルテリの話をしようよ。今日はバルテリの日なんだから」と、敗れたベッテルは潔くライバルを讃えた。

LAT


 接戦の今シーズン。メルセデス vs フェラーリの攻防は、グランプリごと、金曜日から静かに進行する。両チームとも、すべての切り札を独占することができない状況で、いかに有効にカードを使うか、頭脳戦が繰り広げられる。そんな張りつめた空気のなかで、“自らの週末”を冷静に築き上げたボッタスが初めての勝利を飾った。タイヤのオーバーヒートという難題から抜け出すことができず、迷路にはまってしまったルイス・ハミルトンの傍らで。

「初勝利によってドライバーは大きく変わる。グリッドにつくたび“自分には勝ち方が分かっている”と考えることができるから」と言ったのは、アラン・プロスト。

「その通りだよ。7年間も勝てない“騒音”のなかに身を置いてきた僕にはよく分かる」と、ミカ・ハッキネンが賛同した。

「ここから大きく前進できると思う」と、控え目な笑顔でソチの勝者が言った。

「すべてが正しく進めば優れた成績が可能だと、ずっと思ってきた。自分にはその能力があると信じてきた。でも、今日はそのコンファメーションが得られて嬉しい。たくさんの勝利が続いていくことを期待しているよ」

 ハッキネンが見出した才能が鮮やかに花開き、ソチは祝福の空気に包まれた。まだ非日常の世界にいるボッタスに、フィンランド国歌が伝える。ついに、優勝したんだよ、と――。

(Text:Masako Imamiya)





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