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【F1ロシアGPの焦点】マネージメントの“スキル”が足りず、自分たちのマシンの速さについていけていないフェラーリ

2019年10月1日

 クリーンエアで走るベッテルは自由にペースを上げていく。路面のμ(ミュー)が低いソチのコースでは、中〜高速のセクター1〜2でタービュランスを受けるとリヤタイヤがオーバーヒートし、セクター3が遅くなる。ルクレールがベッテルのDRS圏内に入れなかったのは当然で、「間隔を詰めろ」というチームの指示もタイヤ性能の低下につながった。スポーティングディレクターのローラン・メキエスが「ポジション交替は後で行なう」と伝えると、ルクレールは「状況は理解できる。問題ないよ」と答え、その後はベッテルとの間隔を詰めようとしなかった。ハミルトンがルクレールに対して間隔を置いたのと同じである。

 ルクレールが言う「状況」とは“チームがベッテルを説得できないでいる”という、フェラーリの混乱ぶりだ。ベッテルはファステストラップを更新し続けることによって“速いのは自分だ”と主張し、チームの無線にも応答しなくなっていた。いずれにしてもポジションを譲るのなら、タイヤを守る必要もない。ソフトの性能が本当に崖を迎えたなら、チームは先に自分をピットインさせるしかないだろう……。

 結局、フェラーリは22周目にルクレールのタイヤを交換。ベッテルはその直後に「リヤタイヤの性能が落ち始めた」と訴えたが、チームは4周の間ベッテルをステイアウトさせた。タイヤ交換直後のルクレールは3周連続でファステストラップを記録、26周終了時点でピットインしたベッテルの前に出た。カーナンバー5のパワーユニットにERSのトラブルが発生したのはその直後──。

「ピットから出て行ってすぐ、ターン1ですでにパワーを失っていた」とベッテルは言う。

「(MGU)Kがなくなった!」と伝えながらペースを落として走行するベッテルに対して、チームが「マシンを止めろ」と指示したのはターン15。「マジで?」とたずねるベッテルに「安全にジャンプして降りろ」と続けた。レース後のフェラーリの説明によると電気系のトラブルによってマシンは危険な状態にあり、ピットまで戻って来ることさえかなわなかったという。

 このトラブルによるVSCがメルセデスにピットインの機会を与え、ソフトに交換したハミルトンは労せずしてルクレールの前に出た。フェラーリにとってさらに不運なことに、VSCが解除された直後にはジョージ・ラッセルがクラッシュし、SCが出動──。温まりの悪いミディアムではリスタートが不利になると考えたフェラーリは30周目にルクレールをピットに呼びソフトに交換。ベッテルをアンダーカットするため、ミディアムに交換したルクレールがそこまでハイペースで走行してきたことも一因だ。これによってボッタスまでもがルクレールに先行し、メルセデスは鉄壁の1-2態勢を築くことになった。

XPB Images

 ベッテルのトラブルは100%不運。しかし、フェラーリにとって後味の悪い負け方であったことは言うまでもない。チームオーダーに対しては様々な意見があるが、何らかの理由でドライバーの戦いを制限する場合、チームは前面に立ち、ドライバー同様に“顔”を見せて全責任を負わなくてはならない。今回の場合は、マッティア・ビノットが無線で介入し、1度目のセーフティカーの後、早い段階でベッテルにポジション交替を指示するべきだった。エンジニアもチーム代表もベッテルへの指示を通すことができないなら、ルクレールに対してスタート直後のスリップストリームを指示する権利もなかったのだ。たとえ、それがメルセデスに有利に働いても、チームの責任だ。

 そんなフェラーリを目の当たりにすると、統制が取れたメルセデスは爽快。しかし、それはハミルトンがバルテリ・ボッタス対比で圧倒的な力を発揮しているからでもある。ハミルトン/ニコ・ロズベルグのような時代を「二度と経験したくない」とトト・ウォルフは言った。チームが操作しなくとも自ずとナンバー1、ナンバー2が明白になるのは、マシン性能が圧倒的な場合には理想的なのだ。しかし今日のように力が拮抗してくると、それで十分だろうか。“歴史的な力”を持っているベッテルにも対抗できるルクレールのような存在が必要なことは明らかだ。それに──F1に夢を託すファンは、ボッタスのレースで気持ちを発散させることはできない。今日のF1が抱えるジレンマだ。

 レース後のルクレールは意外にさばさばとしていて、レースペースではメルセデスが速かったことを認め、いずれにしてもフェラーリの敗因は「セーフティカーのタイミング」だったと強調し、レース後にチーム内で議論する必要も感じないと言った。実際、チームの戦略から離れたところに身を置き、ドライバーとしての腕を上げることに集中しようと決心しているのだと思う。

 ふたりのドライバーが速さを競う。それは“企業”ではなくレーシングチームとしてのF1チームにとって理想の状況であり、そのライバル関係を健全に保つことこそ、技術的にも人間的にも見極める目を持ったマネージメントの仕事であるはず。トップチームであるほど、その仕事は難しい。だからドライバーと同様に、マネージメントにも最速のスキルが要求される。いまのフェラーリは、自分たちのマシンの速さについていけていない。

(Masako Imamiya)





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