【F1バーレーンGPの焦点】初表彰台は悔しさとほろ苦い微かな安堵の味──。驚くほど成熟した感覚と思考を備えたルクレール
2019年4月3日
「レースの序盤、失ったポジションを取り戻そうと戦っている時は本当に楽しかった。マシンはその後も本当に最高で、コンディションはとても難しかったけれど──強風のせいで特にターン4の出口はトリッキーだったけれど──僕は自分のレースに集中して走ることができた」
十分なリードを築いて、2回のピットストップでもポジションを譲ることはなかった。第3スティントの序盤も、2番手ハミルトンより0.5〜1秒速いラップタイムで周回した。42周目の2台の間隔は10秒。その後は9秒台の間隔に落ち着いたが、それはルクレールがコントロールしているように映った。
「エンジンに何か異常が起こっている」という無線が放送されたのは、46周目のことだ。フェラーリのペースが急激に落ちた。「いま、チェックしているところだ」と答えるチームに対して、ルクレールは「何が起こってるの?」と問いかける──。トラブルの内容は、無線では詳細に話せない事情もある。それでもドライバーは正確にトラブルを把握し、可能な限りの対処を行うため返答を急かせていた。
「MGU-Hのリカバリーがなくなった」とチームが伝えたのは、47周目のことだった。
レース後、マッティア・ビノット代表はMGU-H(熱エネルギー回生システム)のトラブルを否定し、V6のひとつの気筒で燃焼のトラブルがあったと語っている。1気筒分の力を失えば、結果としてMGU-Hの回生が途絶えてしまうことは推測できるが、ICE(内燃機関)、MGU-Hが物理的に傷ついていないことを祈るばかりだ。
「これまでも何度も話してきたけれど、僕は常に、結果よりも“もっとうまくできる可能性”を真剣に考えている」
失った勝利よりも、そこに至るレースの内容を見つめようと、ゴール後の喧噪のなかですでに、ルクレールは熟考していた。F1デビュー2年目でフェラーリに抜擢された若者は、自分を“プレッシャーは感じない性質”だと言う。
「プレッシャーを感じる人間ならフェラーリで走ることによってそれが増すのかもしれないけど、僕はずいぶん前から、人が自分にどれだけ期待しているか、自分がどういうふうに映るのか、といったことを気にしない人間になっている。努めているのは、自分を客観視し、自分自身に対して正直であること。それによって時間を浪費せず、すぐに改善に取りかかり、進歩の速度を上げることができると思うから。結果の予測もしない。自分がやるべきことに集中して努力を重ねれば、結果はそれについてくるものだから」
あどけなさを残した表情とは裏腹に、驚くほど成熟した感覚と思考を備えたドライバーだ。そして何より、マシンを“感じ取る”類稀な能力、反射神経、器用さという、生来の才能がある。鮮やかなコントラストは、スター選手としての素質の証。
砂漠の真ん中に建設されたサーキットと、夜空を彩る花火。非現実的な空間で、シャルル・ルクレールが新鮮さ以上に“懐かしさ”に似た感情を抱かせるのは、この先、彼が築いていくキャリアを、私たちがすでに、とても現実的に捉えているからかもしれない。
(Masako Imamiya)
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※マイアミGP終了時点
1位 | マックス・フェルスタッペン | 136 |
2位 | セルジオ・ペレス | 103 |
3位 | シャルル・ルクレール | 98 |
4位 | ランド・ノリス | 83 |
5位 | カルロス・サインツ | 83 |
6位 | オスカー・ピアストリ | 41 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 37 |
8位 | フェルナンド・アロンソ | 33 |
9位 | ルイス・ハミルトン | 27 |
10位 | 角田裕毅 | 14 |
※マイアミGP終了時点
1位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 239 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 187 |
3位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 124 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 64 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 42 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 19 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 7 |
8位 | BWTアルピーヌF1チーム | 1 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 0 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
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