「HRDさくらのメンバーが昨年末から今年にかけて取り組んできた、信頼性、ターボ、馬力に関する開発によって、急成長していることを確認できました」
夏休みに入る前、前半戦のホンダの戦いを長谷川祐介総責任者は、そう総括した。
例えば、信頼性である。ドイツGPでフェルナンド・アロンソが使用したエンジン(ICE)は、じつは6レース目だった。これはホンダにとって、復帰後、初めての挑戦だった。レース終盤は燃費に苦しんで入賞は逃したが、ウイリアムズやフォース・インディアと戦ってトラブルなく走りきったことは大きな収穫だっただろう。
また、バトンもドイツGPではターボが6レース目だった。さらにICEは5レース目。こちらも最後まで問題なく8位に入賞し、高い信頼性を披露。「これはわれわれにとって、大きな自信となりました」と長谷川総責任者も評価していた。
ただし、長谷川総責任者は前半戦の戦いに、決して満足はしていない。
「前半戦は想像以上にきつかった。ウインターテストの段階では『完走すれば、ポイントは取れるかな』と思っていましたが、特にフォース・インディアとウイリアムズの強さに驚きました。普通に戦っていたのではポイントは取れない。今年ここまで、確実に成長しているところは見せられていますが、まだまだ満足できるレベルではありません。F1の最高レベルに達するまでには、まだまだ時間がかかるという厳しい現実に直面しています。さらなる努力をしなければなりません」
もし、前半戦を振り返って「満足しています」と答えていたら、ホンダの未来はそれほど明るくなかっただろう。しかし、長谷川総責任者は「満足していない」と明言したことで、現在はまだトンネルの中でもがいているかもしれないが、そのトンネルを抜けることができれば、明るい未来が待っている。